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カルロス・ゴーンの反論(上) 日産に損害を与えていない 公表された以外の報酬はない
金融商品取引法違反や会社法違反(特別背任)の容疑で逮捕された日産自動車の前会長カルロス・ゴーン容疑者が8日、東京地裁で行われた勾留理由開示手続きのために出廷し、無罪を主張した。
■金融商品取引法違反(有価証券虚偽記載)について
●カルロス・ゴーンの主張
ロイターの報道によると、「検察側の主張と異なり、私は日産から未開示の報酬を受け取ったことなく、未開示の固定金額を日産から受け取る拘束力のある契約を結んだこともない」と主張した。
カルロス・ゴーン自身が発言で触れるのは、後になっていたが、これは背任罪容疑の事件と一対の問題と捉えたほうが良いようだ。つまり「報酬は、当初からドル建てで支払われることを望んだが円建てとされた」。それで新生銀行とスワップ契約を結んだ。言外ににじませるのは、「日産が円建てにしたために損害が出るのだから、日産が保証してもよいはずだ」との筋論だ。個人資産の運用だが、日産の報酬支払方法が原因だと主張しているように聞こえる。
●検察の逮捕容疑
一方で、検察は未記載の報酬金額について「カルロス・ゴーンがサインした書面がある」としている。つまり、確定した時点で報酬金額に加えて公表する義務があるとされる。この「報酬が確定していたかどうか」が論点となるのだろう。
■特別背任罪
・第1は20年10月、新生銀行とカルロス・ゴーンの個人資産管理会社と契約した通貨デリバティブ(金融派生商品)で、リーマンショック時、生じた約18億5000万円の評価損を日産に付け替えた。
●カルロス・ゴーンの主張
産経新聞の報道によると、「日産の信用力を借りるため、一時的に契約者を日産に変更しただけだ」。「実際に日産に損害を与えていないし、損害が出た場合、本人が日産に支払い、日産が新生銀行に支払っている」と主張した。
報酬の支払いについてドル建てにならなかったことで損害が出ている状況なので、日産の信用力を借りて差損の確定を回避し、リーマンショックから立ち直れば損害が縮小する見込みもあったことから、差損が出れば自身で払う約束で契約し、実際に払った実績もある。日産に損害を与える意思はなかったし、実際に出ていない。
その後、証券取引等監視委員会の指摘を受けて契約を戻したが、その際、サウジアラビアの実業家、ハリド・ジュファリ氏が、新生銀行に対して約30億円を担保に外資系銀行から信用状を発行したため、ゴーン容疑者は追加担保を免れたとされる。しかし、支払金額は正当な仕事の対価としている。
●検察の主張
個人の契約を日産につかえた時点で、その後、実際に損害が出ていなくても背任罪に当たる。法的解釈では、当初のドル建ての報酬支払いをカルロス・ゴーンが望んで叶えられなかったとしても、犯罪は成立する。
・第2が、カルロス・ゴーンの個人的信用保証をしてくれたジュファリ氏が経営する会社に、21~24年、アラブ首長国連邦の日産子会社「中東日産」から合計1470万ドル(現レートで約16億円)を入金させたとされる件。
●カルロス・ゴーンの主張
同じく産経新聞の報道によると、「ジュファリ氏の会社への報酬額は日産社内に開示され、適切に承認され、日産へのサービスの対価である」。「次にハリド氏について。長年、日産の支援者であり、パートナーだ。ハリド氏の会社は資金調達を支援してくれたし、地元の販売代理店の紛争のときにも支援してくれた。実際、販売代理店を立ち直らせ、トヨタなどの強豪他社に勝てるようにしてくれた。日産に極めて重要な業務を推進してくれたので、関係部署の承認に基づき、対価を支払った」と主張した。(記事:kenzoogata・記事一覧を見る)
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