胸躍る大河!「いだてん」が想像以上のインパクトでスタート

2019年1月8日 09:04

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■近代をテーマにした大河がスタートテープを切る

 2019年が幕を開け、東京オリンピックも来年に迫っている。開催が決定した当初に比べるとネガティブなニュースが流れてしまい、あまりいいイメージを抱かない人もいる。しかし、そんなイメージを覆してくれそうなのがNHKの大河ドラマ「いだてん~東京オリムピック噺~」だ。

 連続テレビ小説「あまちゃん」にて人気を博した脚本家・宮藤官九郎が今度は大河に挑戦することとなり、しかも33年ぶりの近代史だ。はじまる前から脚本家・キャスト陣が話題となっていたが、1話を見るとクドカンワールド全開ながら「スポーツとは」をもう一度見つめ直せる作品となっていた。

■時は明治、一人の男がオリンピック参加に燃える

 昭和34年(1959年)の東京は、オリンピック招致を目指してあらゆるところで工事が行われていた。そんな中、東京都知事の東龍太郎(松重豊)や日本オリンピック委員会(JOC)総務主事の田畑政治(阿部サダヲ)、そしてJOC常任委員の岩田幸彰(松坂桃李)はNHKの解説委員である平沢和重(星野源)に招致スピーチを依頼し、彼に1964年のオリンピック開催のすべてをかけることとなった。

 その一方で落語家の古今亭志ん生(ビートたけし)は浅草の寄席で、若き日の志ん生こと美濃部孝蔵(森山未来)の頃まで振り返り、明治42年(1909年)に起こったオリンピックに関する噺をはじめるのだった。この年、柔道の創始者であり世界的に名の知られている嘉納治五郎(役所広司)は、フランス大使館でフランス大使・ジェラールと面会していたのだった。

 彼はスポーツと平和の祭典であるオリンピックにアジア諸国も招致したいと思っており、そこで日本にも参加してもらおうと考えていた。近代スポーツの在り方に理解を示した治五郎はさっそく東京高等師範学校の教授・永井道明(杉本哲太)と助教授・可児徳(古舘寛治)にオリンピックのすばらしさを伝える。しかし、日本人は外国人に比べると体格的に見劣りし、さらに「スポーツ」の考え方も理解してもらえなかった。
 

■「天狗倶楽部」との出会いが夢を大きくする

 賛同も得られず資金的にも苦慮する中、治五郎は横浜正金銀行・副頭取の三島弥太郎(小澤征悦)邸で開かれるパーティーに出席した。そこで野球をしていた「天狗俱楽部」に遭遇し、その中でもリーダー的存在である三島弥彦(生田斗真)と出会う。彼らはただ騒ぐだけの野蛮な青年たちに見えたが、彼らこそ治五郎の考える「スポーツ」を体現しようとしていたと感じる。

 だが、三島弥太郎から融資を受けることもできず、弥彦のような若者と出会ったもののオリンピックは諦めるしかないと考えた治五郎。しかし、ストックホルムオリンピックのスタジアム完成図とポスターを見た治五郎は招待を受けることを決め、アジア初のIOC委員となった。

 いよいよオリンピック出場に向け、本格的に出場する選手を天狗会と探すことになる治五郎。そこで予選会を開くことになるが、そこにはマラソンも含まれていた。しかし、マラソンは外国人選手でも倒れる人がいるほど過酷な種目で、誰もが出場選手は出ないと考えていた。

■熱き想いに動かされる人を鮮明に描く

 物語は「オリンピック」をキーワードに、夢に向かってひた走る人たちを1964年の東京オリンピック開催まで描くことになっている。本作はオリンピックに初出場した人たちを描く1部と、1964年の東京オリンピック開催までを描く2部構成で、1部の主役はオリンピックにマラソンにて初出場した金栗四三(中村勘九郎)だ。

 1話ではオリンピック参加に自らの人生を掛けた治五郎と、予選会に現れた金栗四三との出会いまでを描いた。そうそうたるメンバーの共演が織りなす人間ドラマに目が釘付けになり、そこにクドカンらしい世界観も混ぜられ、非常に見やすい作品となっている。また、本編の話をビートたけし演じる古今亭志ん生が語っているという形式も見どころのひとつだ。

 大河らしくない作りながら、しっかりと人間ドラマとなっている稀な作品といえるのだ「いだてん」だ。

 「いだてん~東京オリムピック噺~」は毎週日曜20:00から放送中。(記事:藤田竜一・記事一覧を見る

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