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颯爽と上場した筈の、ソフトバンクの値動きが冴えない
ソフトバンクは、19日の新規上場にあたり、売り出し価格を上・下限の幅がない異例の「一本値」(公開価格)とし、仮条件と同じ1500円に決定していた。「ずいぶん強気だな」との声もあったが、市場からは最大2兆6000億円強の資金を吸収する目論見で、過去のNTTやNTTドコモをも上回り、国内過去最大規模の新規株式公開(IPO)であった。ネームヴァリューや企業規模を考えて、2倍に届かない応募倍率に物足りなさを感じる声も上がっていた。
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上場初日である19日の初値は1463円となり、公開価格を下回るスタートは各方面の失望を誘った。今回売り出された株式はソフトバンクグループが保有するソフトバンク株の約37%に当たる。おそらく10万人規模の個人株主が誕生したと見られ、息をのみ祈る思いで価格の推移を見守ったことだろう。
上場前の目論見では、純利益の85%程度を配当に充てる方針を示し、結果として5%という高い配当利回りを投資家に期待させた。公開価格を強気と見る声も、配当利回りの高さにかき消されていた。
2日目の値動きは初値で初日の終値をさらに下回る1183円をつけたのちは前日の終値近辺を上下した。終値は前日をやっと14円上回る1296円で、2日続けて1300円を割った。
仮に1億5000万円投資して10万株を購入した人は、この時点で2000万円のロスを出した計算だ。10万人規模の個人株主がロスを出したことになる。皮肉なことに、初日や2日目の流れの中で購入した人の配当利回りは、6%近くに向上する。
日本証券業協会の鈴木茂晴会長は19日に開催された記者会見で、ソフトバンクの初値が公開価格に届かなかったことについて、「タイミングが悪かった」と印象を表現した。確かに、通信と端末の完全分離により携帯キャリアの収益環境悪化が予想される時期である。上場の直前には中国ファーウェイの副会長兼最高財務責任者である孟晩舟氏が逮捕され、ソフトバンクとファーウェイの通信機器に関わる関係が懸念されることにもなった。その上、ソフトバンクで起きた通信障害が大きな社会問題となり、とどめには、ソフトバンクグループとヤフーの合弁であるPayPayの鳴り物入りの大キャンペーンが、度重なるシステム障害やクレジットカードの不正利用、あまりにあっけない終了と、幻滅要因が重なったこともスタートダッシュ失速の要因として考えられる。
3日目の終値は1316円の20円高で終了した。取引時間中を通して上向きになりかけると売りが出る状況で、一時は伸び率6%台をうかがう勢いも感じさせたが、終了間際の15分間に交錯した激しい売り買いで僅かな上昇に止まった。22日からは3連休となりクリスマスを経てすぐ御用納めだ。
背水の陣で営業攻勢をかけた証券マンには、ちょっと切ない年末年始となりそうな雲行きである。(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る)
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