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【コストカッター、カルロス・ゴーン(9)】 現実の「RAMAと総会での想定される抗争劇」
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■「改定アライアンス基本合意書(RAMA)」
ルノーと日産には、「改定アライアンス基本合意書(RAMA)」という協定が存在する。株式比率で攻防する前に、この協定の取り決めを両社は守らねばならない。どの企業の主導権を握るにも、取締役会で多数を占めなければならない。その取締役の人事権を持つのが株主総会だ。そこで、日産側から会社としての人事案を株主総会に提案するのだが、その案にルノーは賛成しなければならないとRAMAに規定されているようだ。もちろん、事前に取締役会でルノー、日産側で調整された人事案となる。さらに協定では、日産側が1名ルノー側より多いことが決められており、総会に提出される人事案は、この協定に従えば、常に日産側が優位となるはずだ。
【前回は】【コストカッター、カルロス・ゴーン(8)】 日本側経営陣は組合と連携せよ
しかし、これではルノー側は日産社内で優位になれないこととなる。協定をみると、カルロス・ゴーンがフランス政府からも干渉されない仕組みを考えていたことが分かる。そうした、ゴーン自身が保身のため作ったバランスで出来ている協定内容で、日本側が優位に立てる可能性があることが分かってきたのだ。
■RAMAと総会での想定される抗争劇
フランス側(ルノー・フランス政府)が優位に立つには、日産取締役人事権を握り、フランス側取締役を多数にしなければ何事も進まない。もしこれをフランス側が打破しようとするのなら、日産株を買い増さねばならない。7%程度なので金額はさほどでもないと思われるが、日産株買い増しには日産側の事前の承諾がいる。これを破ると、「日産の経営に不当な介入」とされて、日産側にルノー株10%の買い増しの口実とされ、ルノー株25%を日産に握られて「持合い」が成り立ち、フランス側の日産株の議決権が無効となってしまう。この相互の「伝家の宝刀」を使う場面となると、両者のアンダーグラウンドでの攻防が焦点となる。
フランス側が強硬手段に出るとすれば、日産株主総会で43.3%の持ち株と、第三者の7%以上の株式を合わせた議決権で、日産側の取締役人事案を否決し、フランス側の人事案を通すことだ。これはRAMA違反となり、日産側にルノー株買い増しの口実を与えることとなる。しかし、総会で議決してしまえば、日産の取締役会ですべて牛耳ることが出来る。日産がルノー株を買い増しする決議をする暇を与えないことになる。「敵対的乗っ取り」の手段だ。これは法廷闘争となる可能性もあるが、日産の意思決定組織の取締役会を牛耳れば、日産法人としての意思はフランス側の思惑通りとなり、すべてを牛耳ることとなる。ただ、これはフランスと日本の外交問題になる危険があり、現実に行うとは思えないが・・・
日本側がこれを防ぐとすれば、総会前に政府系資金などを使ってルノー株10%程度買い付け、総会直前に日産側に売り渡すことだが、これも総会前であるのでフランス側に知られ、前記のRAMA違反を行う口実をフランス側に与えることとなる。フランス側のRAMA違反を防ぐ手立てが見つからない。詳細な規約、法律の検討が必要だ。
こういったように、相互のバランスを取ってカルロス・ゴーンが主導権を握れる仕組みになっていたのだが、それほどのカリスマとなる人物を、次の会長としてルノー側が日産に送り込めるとは考えにくい。この裏には、日本政府の意思が反映されていると見るのが大人であろう。もちろん、マクロン大統領も知っているからこそ、安倍首相に会談を申し込んだものと見える。落としどころを探る展開となることは明白だ。高度な政治的判断が決めることとなるのだろう。
次は、3社アライアンスの死活的テーマについてみてみる。(記事:kenzoogata・記事一覧を見る)
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