JAXAの探査機「あかつき」、金星軌道投入から3周年 ミッションは燃料が尽きるまで

2018年12月8日 12:39

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解析では、2016年3月から11月まで、全466枚の金星夜面画像を波長2.26マイクロメートルの画像を用い、模様を測定しやすくするために昼面から広がっている光を除去したという。(C)JAXA / ISAS / DARTS / DamiaBouic

解析では、2016年3月から11月まで、全466枚の金星夜面画像を波長2.26マイクロメートルの画像を用い、模様を測定しやすくするために昼面から広がっている光を除去したという。(C)JAXA / ISAS / DARTS / DamiaBouic[写真拡大]

 金星探査機「あかつき」は7日、2015年12月7日の金星軌道投入から3周年を迎えた。これに先立ち、11月27日には軌道周回数の100周回目も達成している。当初、軌道投入からの定常運用では、2年で観測が完了する予定であったが、その期間を大幅に超えて観測を行う「延長運用」となっている。説明によると、プロジェクトの期間は「残燃料で寿命が決まる」とされており、(大きな軌道変更等がないと仮定して)低く見積もると4.2年後の2023年初頭まで、最長では、2030年まで寿命があると計算された。

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 宇宙航空研究開発機構(JAXA)は7日、「あかつき」の観測成果に関する記者説明会を行い、宇宙科学研究所(ISAS)太陽系科学研究系の中村正人教授、佐藤毅彦教授、国際トップヤングフェローJavier Peralta(ハビエル ペラルタ)氏の3人が出席した。

 中村教授の説明では、2010年5月に打ち上げられた「あかつき」は同年12月に金星に到達し、金星周回軌道投入を試みたが失敗した。この失敗から5年後の2015年12月7日、再度金星の軌道投入を行い、成功した。金星を周る軌道は約38万キロメートル、軌道周期は約10.5日となった。2016年4月から定常観測運用を開始したが、同12月にIR1とIR2のカメラが機能を停止。2018年4月には定常運用を終了して後期運用を開始し、プロジェクトはISASソーラーチームで運用する運びとなった。

 佐藤教授は、「2つのカメラ(IR1とIR2)は1つの制御装置『IR-AE』の電源系の不調が原因で機能停止している。『IR-AE』の電源をオンにするという試みを定期的に行っている」と語る。カメラが運用できた2016年3月から11月の間に、非常にクオリティの高い全466枚の金星夜面画像が撮られており、再びカメラを使用することを諦めていない。

 ペラルタ氏は、このあかつき「IR2」が撮影した画像により明らかになった、金星夜面における「下層雲の運動」に関して報告を行った。あかつきは、「スーパーローテーション」と呼ばれる、金星で発生している高速な風の流れなどの解明が期待されおり、これまでもいくつかの発見を成し遂げていた。

 2017年8月、JAXAは、あかつきによる2016年のある時期の観測データから、高度45-60kmの「中・下層雲領域」で、風の流れが赤道付近に軸をもつジェット状になっていることを発見したと発表。これまで未知であったこのジェット気流を「赤道ジェット」と名付けていたが、ペラルタ氏によると、目視により何百枚もある画像全部を見比べることで、この「赤道ジェット」の存在を再確認したという。

 またペラルタ氏は、太陽加熱の影響により、下層雲にまで熱潮汐が及んでいる可能性も初めて示唆されたことを報告。特に、夜の6時から11時にかけて、赤道付近で弱いが明らかな加速があることを初めて検出したという。他にも、下層雲領域の風速の年変化(1978-2018)をまとめ、緯度30度N~30度S範囲で最大で秒速30メートルもの風速変化があることも明らかにしたという。

 今後、これらの発見により、金星大気のスーパーローテーションの謎に迫ることが出来るかも知れない。

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