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かみのけ座銀河団から多数の球状星団を発見 ハッブル宇宙望遠鏡
かみのけ座銀河団から発見された多数の球状星団 (c) NASA, ESA, J. Mack (STScI), and J. Madrid (Australian Telescope National Facility)[写真拡大]
米航空宇宙局(NASA)が運営するハッブル宇宙望遠鏡の公式サイトHubbleSiteは11月29日、かみのけ座銀河団の中心部を精査したところ、2万2,426個もの球状星団を発見したことを報告した。
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■一部の球状星団は肉眼でも確認可能
球状星団はスノーグローブのような形状をした、数十万個の星からなる天体だ。宇宙のもっとも初期に存在した天体であり、銀河の誕生や成長に不可欠な天体だと考えられている。天の川銀河にも約150個もの球状星団が知られ、それらのいくつかは肉眼でも確認できるため、アマチュア天文家の関心を集める天体のひとつだという。
今回、球状星団が発見されたかみのけ座銀河団は、地球から約3億光年彼方に位置する天体だ。1000個以上の銀河から構成され、その中心にはかみのけ座銀河団を支配する2つの巨大銀河が存在する。
球状星団は銀河団と比較すると非常に小さく、その数は大量であるため、かみのけ座銀河団の重力が空間をどのようにゆがめるのかを追跡するのに役立つという。事実、可視化できない物質「ダークマター」が大量に存在することを示す、重力の異常を観測できた最初の天体が、かみのけ座銀河団である。
■プロジェクトには豪大学生らも貢献
かみのけ座銀河団は約3億光年離れているため、ハッブル宇宙望遠鏡でさえ球状星団は光の点として現れるのみである。今回、かみのけ座銀河団内の銀河間に球状星団が散在していることが確認された。またいくつかの銀河星団は橋に似た形状で並ぶため、銀河同士が重力で強く引きあっていると考えられる。
今回の研究を進めるにあたり、豪スウィンバーン工科大学によるプロジェクトのデータを活用することが期待されていた。このプロジェクトは、ハッブル宇宙望遠鏡を活用し、かみのけ座銀河団全体のデータを求めるものだ。ところがプロジェクトの半ばの2006年、ACSカメラの不具合に見舞われた。
そこで、プロジェクトに参加する学生とともに、ハッブル宇宙望遠鏡による別の観測プログラムが撮像した球状星団を調査したという。「このプロジェクトは、ほとんど天文学の知識のない大学生に、天文学を学ばせる機会を与えた」と、豪国立望遠鏡機構のジュアン・マドリッド氏は語る。
研究の詳細は、米天文学誌Astrophysical Journalにて11月9日に掲載されている。(記事:角野未智・記事一覧を見る)
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