障がい者が活躍する職場 企業存続にも

2018年11月24日 16:35

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ハローワークを通じた障がい者の求職状況(画像: 厚生労働省資料より)

ハローワークを通じた障がい者の求職状況(画像: 厚生労働省資料より)[写真拡大]

 国や地方自治体、企業は障がい者を一定の割合以上雇用するよう法律で義務づけられているが、今年4月からは障がい者雇用義務に精神障害者が加わり、法定雇用率も引き上げられた。国が障がい者数を不正に水増ししていたことが問題となり、「民間企業は納付金まで徴収されるのに模範となるべき国は何をしている」という怒りの声が聞かれたが、企業にとって障がい者雇用はデメリットばかりではない。それを期に仕事の見直しを行い、誰でも働きやすい職場にすることは、企業価値を上げ、女性や高齢者、外国人からも選ばれる「生き残る企業」になる道だと考えるべきだろう。

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■障がい者雇用義務の仕組み

 障害者雇用促進法(障害者の雇用の促進等に関する法律)は、身体障がい者を対象として1960年に制定された。その後、1998年7月から知的障がい者が加わり、今年4月から精神障がい者が対象として追加された。

 従業員を45.5人以上雇用している民間企業は、障がい者を1人以上雇用しなければならず、従業員に対する障がい者雇用率を2.2%以上にすることが義務づけられている。これを満たせない場合、常用労働者100人を超える企業は納付金を徴収される。逆に、法定雇用率を達成している企業は調整金や報奨金が支給されるという仕組みになっている。

■精神障がい者の就労が大幅に増加

 ハローワークにおける障がい者の職業紹介状況をみると、2017年度の新規求職申込件数は20万2,143人、就職件数は9万7,814人で、就職率は48.4%だった。9年前に比べて新規求職申込件数は1.7倍、就職件数は2.2倍に増えている。

 2017年度の新規求職申込件数を障がい種別の構成で見ると、精神障がい者が46.4%ともっとも多く、次いで身体障がい者の29.9%、知的障害者の17.7%、その他の6.0%となっている。この9年間の推移を見ると、身体障がい者がやや減少傾向、知的障がい者がやや増加傾向であるのに対して、精神障がい者は3.3倍と大幅に増加している。2017年度の就職率は、知的障がい者58.7%、精神障がい者48.1%、身体障がい者44.2%の順に高かった。

■受け入れ準備は、専門機関のアドバイスを受けて

 事業主が障がい者を雇用するときにはそれなりの知識と受け入れ態勢が必要である。障がいの内容や程度が個人によって異なるので、障がい者が能力を発揮でき、生きがいを持って働けるようにするには職場の環境を合わせる必要があるためだ。

 障がい者雇用の相談を受ける公的機関として独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構がある。同機構の中に各都道府県別の地域障害者職業センターがあり、個々の事業主のニーズと課題を分析して障がい者を受け入れる「事業主支援計画」を策定して支援する活動を行っている。障がい者を受け入れる前にこれらの専門機関を利用して準備を整えることが必要だ。

 障がい者の求人申込みはハローワークに行うことになる。ハローワークでは専門の職員・相談員が就職を希望する障がい者に対して職業相談を行い、就職後も業務に適応できるように、職場定着指導などを行っている。事業主にも助言をしており、地域障害者職業センターなどの専門機関の紹介、各種助成金の案内、就職面接会なども提供している。

■民間主催のセミナーや求人支援も利用

 事業主が障がい者を受け入れる際の支援をするために、民間業者も活発に事業を展開している。

 日本能率協会は、来年3月に企業の人事部門、担当事業部のスタッフを対象に「障がい者と共に働く職場づくりセミナー」を開く。2日間の日程で、障がい者採用で注意すべきことや障がい者社員とのコミュニケーション、社内での理解などについて学ぶが、これまでの参加者からは「障がい者雇用=業務改善につなげるということに気付かされた」「グループワークで他企業の取組みが参考になった」などの声が寄せられている。

 人材紹介サービスのレバレジーズは、4月から障がい者就労支援サービス「ワークリア」を始めた。これは、未経験・就業経験の少ない障がい者を契約社員として雇用し、就業訓練後に希望する企業に紹介するもの。また、6月からは企業の採用担当者向けに「障がい者雇用セミナー」を企画、12月11日には第4回目のセミナーを開催する。

 障がい者専門の求人サイトを運営している会社もあり、これらの民間業者の利用も一つのポイントになるだろう。

■障がい者が活躍すれば企業は伸びる

 障害者雇用促進法は障がい者の就労促進を目的として企業に雇用義務を課している。また、法定雇用率に達しないと納付金を徴収されたり、罰則を受けたりもする。だからといって、受け身の姿勢で安易に障がい者を雇うようなことをすれば、職場に不満が募ったり、障がい者が居着かなくなり、却って社会的評価を落とすことにもなりかねないということを事業主は自覚すべきだろう。

 ではどうすればいいだろうか。それは、覚悟を決めて真剣に障がい者が働きやすく、しかも長続きする職場を作ることだ。

 個々のハンディキャップに合わせて職場のバリアをなくし、仕事の中身を見直して従業員の能力それぞれに合わせた働き方を決め、従業員相互の理解を深めることが障がい者を受け入れるために必要なことである。そうなれば当然、従業員に無理な重労働を押しつけることはなくなるだろう。障がい者にとって働きやすい職場は、高齢者や妊産婦、病人、けが人、外国人にとっても働きやすい職場になるはずである。

 人口減少時代の企業は、障がい者や高齢者、女性、外国人に頼らなければ存続が難しくなるだろう。障がい者が活躍できる職場を作ることは、そういうさまざまな個性を持った従業員が生き生きと働くということである。そうなれば、企業は活性化され、生き残ることができるに違いない。

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