ゴーンがgone(去った) カリスマと言われた男の、想定外の退場! (3)

2018年11月23日 11:19

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 資本金約60億円を全額出資して日産がオランダに設立した子会社は、ベンチャービジネスへの投資が目的とされていた。その子会社は、ブラジルのリオデジャネイロやレバノンのベイルートの住宅を購入し、ゴーン会長が無償で利用していたと伝えられる。ベンチャービジネスへ投資した形跡はない。購入費に改装費や維持費で、20億円以上なので、子会社の設立関係費用を合算すると80億円を超える。リオもベイルートもゴーン会長が幼少から青年期にかけて居住していた思い出の地のようだ。リオの高級住宅には姉が居住し、姉には年間10万ドル前後のアドバイザー料を払っていた。

【前回は】ゴーンがgone(去った) カリスマと言われた男の、想定外の退場! (2)

 会社の物件を役員が利用した場合には、適正な利用料金を支払うか当該金額を役員報酬に含めなければ脱税と判断される可能性がある。但し、本件に限って考えると、リオやベイルートの住宅が福利厚生施設で、役職員が利用する前提があったと言い張ること自体に無理がある。最高権力者の姉が住む家に保養に行く職員など想像もできない。

 「会社の経費を私的な目的で支出したこと」については、会社の金で家族の飲食代や高額な家族旅行費用等々、相当額の支払いが行われていたようで今後徐々に明らかになるだろう。

 いずれも金額が大きいため圧倒されてしまうが、本質は自己の利益を計った”セコい”犯罪だ。企業経営者の中にはやらなきゃ損みたいに考えている人もいるかも知れないが、自己に対する間違った利益還元策である。年収10億円も貰っているならそんなセコいことはするなと思ったら、実際の年収は20億円にも及ぶという。やることはセコいが金額は大きい。

 フランスのルノーは、東京地検特捜部がルノーの最高経営責任者(CEO)であり会長でもあるカルロス・ゴーン容疑者を逮捕したことに対して、ナンバー2に当たるティエリー・ボロレ最高執行責任者(COO)を暫定的にトップとすることを決めた。日本という他国で行われている司法手続きで、妥当性を判断する材料が乏しい段階での解任は見送るという理由は当然だろう。

 日産によると、不正発覚のきっかけは数カ月前にさかのぼる日産関係者の内部通報で、その内部通報が契機となって社内調査が始まったとされる。内部通報に至らせたきっかけは何だったのだろう。ゴーン会長に関わる金銭的な疑惑のほかに、日産・ルノー・三菱自動車のアライアンスにたいする様々な思惑も垣間見える。「同盟」を格上げして合併や統合を指向する勢力と、現状の「同盟」関係以上を望まない勢力、そして再び自立を目指す勢力だっているかも知れない。

 日産のリバイバルはまだ途上だったのだろうか。これからどんなストーリーが紡ぎ出されるのか?伝えられる状況の変化に、耳目を傾けざるを得ない日々が続くだろう。(4)へ(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る

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