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世界で初めて葉緑体を集めて植物の生産性向上に成功 九大の研究
同じ光環境で45日間生育させた、通常の植物(左側)と常に多くの葉緑体を細胞の上面に集めた植物(右側)の生育写真。(画像: 九州大学の発表資料より)[写真拡大]
九州大学の後藤栄治助教らの研究グループは、光合成を行う葉緑体を植物の細胞の上面に集める技術によって植物を大きく育てることに世界で初めて成功した。光合成は植物に共通する働きのため光の質と量を制御すればさまざまな植物の生長をコントロールできることになり、実用化されると野菜の生産性向上などにつながるなど、人間に有用な植物への応用で大きな貢献が期待できそうだ。
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■葉緑体を表面に集めて植物が1.5倍に生長
この成果は、九州大学大学院農学研究院の後藤助教を中心に京都大学の末次憲之博士や首都大学東京の和田正三客員教授らのグループの共同研究によるもので、米国科学誌『Plant Physiology』(オンライン)に掲載された。
植物の生産性向上の研究は世界各地で盛んに行われているが、遺伝子組み換え等のバイオテクノロジー技術を駆使して光合成の反応そのものに手を加えて実現しようとする試みが中心。後藤助教らの研究グループは、光合成を行う場である葉緑体の細胞内の配置に注目して成功に導いた。
葉緑体は、強過ぎる光の下では光を避けて細胞の脇へと移動し、弱い光の下では細胞の上面に集まる。この葉緑体集合反応に注目、形質が異なる変異体を利用して植物の表面に配置する葉緑体の割合をコントロールする研究を重ねた。結果、細胞表面に配置する葉緑体の量と葉全体での光の吸収量が比例し、葉緑体が表面に集中すると多くの光を光合成に利用できることがわかった。さらに、常に多くの葉緑体を細胞上面に集合させた変異株は、通常の植物に比べて同じ光条件下でも1.5倍以上も大きくなることを実証した(図参照)。
■実用化による社会への貢献を期待
光合成は藻類から草や木に至るまで植物に共通した生長のための機能である。したがって、今回の研究成果はすべての植物に応用可能であり、実用化されれば野菜の生産性を向上させるなど、食糧問題や環境問題に対する大きな貢献にもつながることが期待される。
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