火薬で起業の日本化薬が医療医薬品企業になった背景と現状

2018年10月30日 11:14

印刷

 日本化薬の起源は火薬。1916年に日本初の産業用火薬メーカーとして設立されている。現在は半導体向けエポキシ樹脂(熱硬化性樹脂)など機能化学品の製造を主たる事業としている。そんな日本化薬にあって総売上高の3割近くを「医療用医薬品」が占めている。どんな経緯で医薬品部門に進出したのか。

【こちらも】介護用ベッドのプラッツはアジア展開に注力中

 実は同社の医薬品事業を知る上では、31年創業の山川製薬の存在なしには語れない。創生期の主力商品は「(山川)アスピリン/32年上市」。そんな両社が43年に合併し、日本化薬は再スタートした。日本化薬の医療用医薬品事業のベースは、山川製薬の存在といえる。

 が、どんな事業・企業にも伸長していくためには、大きな契機が必要。69年の抗がん剤「プレオマイシン」発売が、まさにソレだった。以降、日本化薬は「抗がん薬」「がん関連製剤」を軸に医薬品業界に足を深く踏み入れていった。斯界のアナリストは「日本化薬の抗がん剤関連に対する医療業界の評価は高い」とした上で、こう語った。

 「同社には400名以上のMR(医薬情報担当者)がいるが、うち100人以上ががん専門のMRという点にそれは象徴される」。昨年末時点でジェネリックを含め同社のがん関連治療薬は、33種類・40品目に及んでいる。ちなみに件のアナリストは「医薬品情報センターを開設している点なども、評価に値する」とした。ここではフリーダイヤル番号は伏すが、要するに「医療関係者からの問い合わせ」や「患者・家族からの処方された同社製医薬品に対する問い合わせ」に回答する枠組みが整っている。

 こうした主軸を有しながら、日本化薬はその歩みのスピードを緩めようとしない。

★ジェネリック医薬品への対応:制がん剤や制吐剤など、がん関連薬が主体。自社開発の抗がん剤2相入り等もあるが、上市・導入による抗ガン剤関連剤に加え「ラインアップの充実」が背景となっている。

★バイオシミラー(バイオ医薬品の後発品)の事業化:バイオシミラーはがん治療や関節リウマチ治療で主に役割を果たしている。そんなバイオシミラーを幅広く提供するための、体制整備が進められている。3剤目のバイオシミラーが3月に承認。

★IVRへの注力:IVRは画像下治療。エックス線透視や超音波像、CTスキャン画像を見ながら体内にカテーテルや針などの細い管を入れて行なう治療法。新たな柱として2010年に進出。がん領域における患者の身体的負担軽減のため、さらには対象臓器や疾患の拡充に研究開発を進めている。

 勿論、循環器系などがん関連以外の医薬品の開発とも取り組んでいる。だが医薬品業界も他の業界も「得手分野」「差別化分野」を持つのは、強みといえる。(記事:千葉明・記事一覧を見る

関連キーワード

関連記事