KYB検査データ改ざん クラウン・カローラなど大丈夫か?原因次第では全製品に疑問?

2018年10月21日 20:15

印刷

 検査データ改ざんした製品が「どの建物に使われているのか?」に注目が集まってきたが、規格外のダンパーでも損害がはっきりするほどの地震が起きるのは、直下型地震、あるいは南海トラフによる大地震などで、KYBが対策を終わる2年間で起きる確率は低いのだ。また起きてもすべてが損害に直結するのではなく、揺れが大きかったり、破損が大きかったりする損害の幅で差が生じるのだ。すぐに危険ではないので冷静に、KYBに出来るだけ早く補修させることが肝要だ。

【こちらも】トヨタ・カローラスポーツのショックを造るKYB、ビル免震・制振装置の検査データ改ざん

 それにしても、この事態がKYBの体質であると、自動車などの製品に対しても疑惑を向けなければならなくなる。そのため、真の原因を早急に把握する必要がある。これまでのところでは「現場の怠慢」として、現場を切り捨てるしぐさが見られるが、スバル、日産などと同じように、経営者の経営手法の改善がなされないと、企業体質の根本的解決は難しいと考える。つまり同種の問題は対象企業では、繰り返し起きていると考えるのが正しいことになる。

■自動車用オイルダンパー「サスペンション」とは?

 まず、自動車にオイルダンパーが使われていることを知っているだろうか?オイルダンパーがないと自動車は使い物にならない状態となる。スプリングだけで自動車を走らせてみたことのある人はまずいないであろうが、まともな走りにはならない。オイルダンパーの役割は「振動を止める」ことにある。車でタイヤが弾んだ時、すぐに収まるような抵抗になっているのだ。

 実車でのテストは容易ではないが、スプリングだけの走行をラジコンカーで試したことがある。すると、弾んでしまって何時までも収まらないどころか、スピードも上がらない。しかし、オイルダンパーを取り付けると振幅がすぐに収まるようになり、オイルの粘度を変えてみると、いろいろな路面に対応することが出来た。

 さらには、ラジコンカーではスプリングの役割をプラットフォーム自身に持たせるものもあるが、プラットフォームにオイルダンパーを取り付けると見事に収まり、剛性の高いプラットフォームのようにふるまうことが出来る。最近では実車の世界で、プラットフォーム自身の剛性を上げるのではなく、オイルダンパーによりプラットフォームの剛性が上がった以上の効果を狙って「パフォーマンスダンパー」を取り付けたりしている。

■不適合製品とは何か?

 今回データ不正が問題となったKYBは元々カヤバ工業と言って、あらゆる油圧ダンパーで名の知られた存在だった。2015年10月1日よりカヤバ工業株式会社からKYB株式会社に変更している。自動車用ダンパーがとくに有名で、最近ではトヨタ・クラウン、カローラスポーツのサスペンションで注目すべき技術力を示している。

 今回は自動車用オイルダンパーではなく免振装置のデータ改さんで、「不適合品は、2000年3月から2018年9月まで出荷した」としている。免震・制振装置としてのオイルダンパーを造るようになったのは2000年3月からのようで、造り始めた最初から「不適合品」を出荷していたことになる。「不適合品」とは国家規格に沿わないもの、契約規格に適合していないものを意味しているようで、建物ごとの特注品となっているようだ。

 建物によって重量や取り付け位置が違うので、それぞれ合わせているのだが、造る時の検査でそれほど規格外が出るのであれば、設計や造り方を変えるべきだったのではないか。かなり無神経な製造管理だが、それがどうして起きていたかによっては、KYB製品全体の信用を検証しなければなるまい。まず免震・制振装置だけの問題と捉えるには、原因が稚拙なようだ。KYBは出来るだけ早く原因を明らかにしないと、むしろ他製品に疑惑が広がる可能性がある。少なくとも品質管理の専門家たちは、疑念を持っているであろう。

 こうした「稚拙な行い」が多くみられるようになったのは、昔からと言うよりは、最近の傾向との印象がある。近年の企業体質を振り返ってみる必要があるようだ。(記事:kenzoogata・記事一覧を見る

関連キーワード

関連記事