GT-Rよ何処へ行く?「インフィニティQ60」ベースの「プロジェクト・ブラックS」

2018年10月6日 18:53

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インフィニティ・プロジェクト・ブラックS・プロトタイプ(画像: 日産自動車の発表資料より)

インフィニティ・プロジェクト・ブラックS・プロトタイプ(画像: 日産自動車の発表資料より)[写真拡大]

■日産インフィニティ・「プロジェクト・ブラックS」コンセプトの存在

 日産は、「インフィニティ」ブランドで「プロジェクト・ブラックS」コンセプトを発表している。これにはインフィニティブランドから2021年にEVを発表するため、その開発コンセプトを示す狙いがある。

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 今回、発表されたコンセプトカー「プロジェクト・ブラックS」は、ルノーが参戦してきたF1のテクノロジーを搭載してくるようだ。それは、デュアルハイブリッドテクノロジーともいえる、エネルギー回生システム(ERS)だ。ひとつは、現在でもHV、PHEV、EVなどで既に搭載されている「MGU-K」と呼ばれる「回生ブレーキ」だ。減速時に惰性で動くタイヤの回転で発電し、電池に蓄え、モーター駆動時に使うものだ。もうひとつは、「MGU-H」と呼ばれる排気熱エネルギーの無駄になっていた部分で、同じく発電して蓄えるものだ。

 この2つで「エネルギー効率」をさらに向上させ、特に加速時にモーターアシストを起動して、低速からの立ち上がり性能向上を狙うものだ。「回生ブレーキ」はすでに実用化されており、日産・リーフの航続距離延長などに貢献している。しかし、排気ガスのエネルギーで発電し蓄電するシステムは、今のところ市販車には搭載されていない。

 これは、「ターボーチャージャ」を積んだエンジンで、吸気を行うのに排気ガスでタービンを駆動しているのだが、加吸がこれ以上必要のない時、捨てられていたエネルギーで発電機を回すことで蓄電するものだ。加速時の排気が少ない初期のタイミングではタービンが駆動できていないので、蓄電した電気で電動モーターを動かし、排気タービンを駆動する。それでアクセルワークにいち早く反応して、いわゆる「ターボラグ」を無くす働きが出来る。

 現代のハイブリット・レーシングカーでは、性能向上に必須のメカニズムだ。エンジンは低速時にトルクが少ないので、モーターでアシストして加速力を上げたいのだが、そのエネルギーを「運動エネルギーの回生」や「熱エネルギーの回生」で補うことで、加速性能を上げて燃費を良くしているのだ。

■「プロジェクト・ブラックS」コンセプトは次期GT-Rなのか?

 インフィニティ・「プロジェクト・ブラックS」コンセプトは、「日産インフィニティ・Q60」をベースに作られており、これは日本国内で「スカイラインクーペ」と言われていたものだ。日産は「スカイライン」をすっかりダメにしてしまったようで、現在はグローバルカーなのだが「日産・GT-R」の元祖とも知らない人が多い。

 日産デザイン責任者のインタビュー記事を読んでいても、「スカイラインGT」の伝統を理解できていないようだ。スカイラインとGT-Rとは区別されており、「GT-R」は、「現代的に(つまり羊の皮をかぶった狼を忘れ)」日産のシンボリックカーと捉えているようだ。すなわち、「グッドウッド・フェスティバル・オブ・スピードで走行したGT-R50」のように捉えている。

 「プロジェクト・ブラックS」コンセプトを見るとF1の技術が移植されており、それはHVレースカーの速さを示すメカニズムであり、かつての「レースで常勝」を義務付けされていた「スカイラインGT-R」にふさわしいメカニズムではある。コンセプトのボディーもエンジンも、現在のGT-Rの後継車にふさわしいものと見える。もう少し高性能化して、実用性も備える2+2のボディーのままであったら、初代「スカイラインGT-R」のコンセプトであった「羊の皮をかぶった狼」の姿である。派手に高性能を保持するより、「GT-Rらしい」と日産デザインの責任者が思ってくれることを望む。日本人でない若い世代では、クルマの歴史を知らないだけに難しいのであろうか?「スカイラインGT-R」だけは「歴史」を重んじてほしいものだ。(記事:kenzoogata・記事一覧を見る

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