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スルガ銀行第三者委員会報告書を読み解く (上) スルガ銀行は日本有数のブラック企業だった
スルガ銀行の第三者委員会の調査報告書が7日公表された。調査報告書と中村委員長の記者会見での発言内容からは、現代日本の一流企業と看做されていた筈の有力地方銀行の看板の陰で、想像を絶するパワハラとガバナンスの欠片もない無責任な経営が行われていたことが明らかになった。
【続きは】スルガ銀行第三者委員会報告書を読み解く (中) 職員の不正は銀行も客も苦しめ続ける
スルガ銀行は17年3月期に総資産4兆4,658億円、業務純益636億円を計上し、総資産に対する業務純益比率(総資産業務純益率)が1.42%に達していた。当時、地方銀行では断トツの第1位で、同率2位の南日本銀行と富山第一銀行が0.59%、地方銀行全体の平均値が0.3%だった。ちなみに、不適切な手数料を徴収していたとして7月に、金融庁から業務改善命令が発出された東日本銀行は0.41%の第16位だった。スルガ銀行に対する当時の評価は、個人向けに特化したビジネスモデルとして極めて高く、金融庁までもが“地方銀行が目指すべき一つのモデルである”として賞賛し、地方銀行を指導するということが行われていた。
スルガ銀行が融資の主たる対象を個人に絞り、独特な新商品を市場に提供していることはよく知られていた。各地方銀行も、事業先に対する融資が伸び悩みかつ金利競争の激化により、適正な利ザヤが確保できないという苦境に喘いでいたため、スルガ銀行方式の後追いとも見られる銀行も出て来たが、なかなか本家のスルガ銀行のような高い収益を上げることは出来なかった。
そんなこんなで、スルガ銀行の総帥としての岡野光喜元会長のステータスは上がる一方で、“スルガ銀行の中興の祖”などと持ち上げるマスコミまで現れた。
そんな祭りは終わった。
第三者委員会から「雲の上から下界を見ているような人たち」と評価された岡野元会長らは、部下に過大な利益目標を押し付け、自分たちはそこからトラブルや軋轢が生じても火の粉を浴びずに済むように、バリアを張り巡らせていた。不都合な報告や相談を遠ざけ、「知らなかった」「報告がなかった」と言い逃れることで、最終的な責任を回避できるようにしていた。
過大な目標を押し付けられた行員は、各自が管掌する部下に対して猛烈なプレッシャーをかけて、目標に到達できない場合には明日がないとまで思い込ませた。末端では、「目標が出来なければビルから飛び降りろ」とか「家族を皆殺しにしてやる」という、常軌を失ったとしか思えないような発言も飛び交っていたという。まるで、「女工哀史」か「蟹工船」の世界だ。半端なやくざなら裸足で逃げ出すようなセリフが、支店長などの管理職の口から飛び出していたのだから、コンプライアンスもガバナンスもあったものではない。今まで外部に漏れ出なかったことが不思議であり、残念でもある。
スルガ銀行が日本一のブラック企業かどうかは不明だが、「日本有数のブラック企業だった」ことに異論はないだろう。(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る)
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