「ぎょしゃ座RW星A」で惑星の残骸が飲み込まれる様子を観測か

2018年7月26日 21:02

印刷

 「ぎょしゃ座RW星A」をX線観測することにより、星を取り囲む円盤内の鉄量が数年で10倍以上増加していることがわかった。これにより惑星誕生の要因解明に1歩近づいた可能性がある。

【こちらも】2008年に大気圏に突入の微小天体、かつて太陽系に存在した惑星の残骸か

 星は新しく形成されたとき、塵や微惑星、ガスの渦巻く円盤を伴うことが知られている。この微惑星などが円盤内で互いに衝突を繰り返した結果「惑星の赤ちゃん」とも呼ばれる原始惑星を形成、最終的に惑星が誕生するとされている。実はこれは“非常に明確なモデル”にとどまり、未だ明確な証明がなされていないのが惑星誕生の現状である。

 今回観測された「ぎょしゃ座RW星A」は生まれてから数百万年と見られる若い恒星。周囲に円盤を持ち、変光星と呼ばれ数十年周期で明るさが変化することがわかっている。2011年、この変光パターンに変化が見られた。これまで1カ月しか続かなかった暗期が半年にまで延び、2014年中頃、2017年1月にも再び暗くなったのだ。

 これをふまえアメリカMITカブリ物理学宇宙研究所のHans Moritz Guenther氏らの研究チームは、「ぎょしゃ座RW星A」が最も明るかった2013年と暗かった2015年及び2017年にNASAのX線天文衛星「Chandra」で観測を行った。その結果、星が暗くなったのは高密度のガスにより光が遮られたためであることが判明した。特に2017年の観測では鉄原子からの強い放射がみられ、星が最も明るかった2013年と比較すると10倍以上もの鉄の存在が円盤内に確認された。Gunther氏らはこの鉄の増加を原始惑星の衝突によるものだと考えている。惑星に含まれていた鉄が衝突により塵やガスとなって中心星(中心となる恒星)へと落ち込み、それらが分厚い層となって星光を遮り暗期を作り出していたのだ。

 氏によるとこれまでのコンピューターによるシミュレーションによって惑星やその衝突の残骸が中心星へ落ち込むことは予測されていたが、その予測が正しければ今回の観測は若い恒星が惑星を飲み込む様子を初めて直接捉えたものになるという。現在惑星の形成プロセスを理解するために多くの研究がなされているが、今回の観測は恒星の円盤内部で惑星が誕生する、または破壊される要因を探る重要な糸口になると期待されている。(記事:秦・記事一覧を見る

関連キーワード

関連記事