珍種ミツクリミジンコを120年ぶりに発見、東北大学の研究

2018年7月25日 21:59

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ミツクリミジンコの雌個体。(画像:東北大学発表資料より)

ミツクリミジンコの雌個体。(画像:東北大学発表資料より)[写真拡大]

 Daphnia mitsukuri (ミツクリミジンコ)という生物がいる。名の通りミジンコの一種で、1896(明治29)年に当時の東京帝国大学教授であった石川千代松博士によって新種登録されたのだが、その後ただの一例も発見例がなく、実在そのものを疑問視されていた。だが今回、東北大学の研究グループが、その実物を発見、実在と現存を明らかにしたのである。

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 東北大学大学院生命科学研究科の丸岡奈津美大学院生(修士2年)と占部城太郎教授の研究チームによると、研究はまず千葉県の印旛沼において行われた。ここで採取されたミジンコを飼育・繁殖させ、遺伝的解析と、詳細な形態観察を行った。

 すると発見されたミジンコが、遺伝的に既知の種とは異なるということが分かった。また同時に、形態的特徴が忘れられた種「Daphnia mitsukuri (ミツクリミジンコ)」に酷似していることが判明し、つまり新種ではなくミツクリミジンコの再発見であることが確認されたのである。

 また、確認された遺伝形態は、同一の個体の存在が中国でも報告されている。他の種と誤認されて記録されていたとのことなのであるが、このことから、中国にもミツクリミジンコが存在しているという事実もまた明らかになったのである。

 なお、ミツクリミジンコはおそらく、発見された19世紀末当時は平地で広く確認できる珍しくない種であったものが、現在は非常に稀少な種になっているものと考えられるという。北米から入ってきた外来種である別のミジンコに、競争的に駆逐されてしまった可能性が高いとのことだ。

 なお、研究の詳細は、かつて石川千代松博士がミジンコについて報告を行ったジャーナルであるZoological Magagine誌の流れを汲む、Zoological Science誌において発表された。(記事:藤沢文太・記事一覧を見る

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