京セラ、アメーバ経営で21年3月期売上高2兆円 税引前利益率15%へ挑む

2018年7月19日 08:01

印刷

 京セラは11日、企業で扱うデータの統合、効率的管理、事務の自動化を実現するシステムプロバイダー独アロス社を買収すると発表した。プリンター・複合機の販売だけでなく、「お客様の満足のために新たな価値を創造し続ける」方針に基づき、トータルでユーザーのコスト削減や生産性向上に貢献することを目指して買収を行ったものである。

【こちらも】三菱電機、高い技術力と幅広い事業領域の強化で売上高5兆円に挑む

 京セラは、1959年稲盛和夫によってファインセラミックの専門メーカー「京都セラミック株式会社」として創業された。資本も信用もない小さな町工場から出発して、私利私欲のためではなく人間として何が正しいかを実践する「京セラフィロソフィ」と、全従業員が経営に参画する「アメーバ経営」によって世界的な企業に発展してきた。

 素材から部品、デバイス、機器、さらにはサービスからネットワーク事業まで多岐にわたる事業をグループ256社体制でグローバルに展開する京セラの動きを見ていこう。

■前期(2018年3月期)実績と今期(2019年3月期)見通し
 前期実績の売上高は過去最高となる1兆5,770億円(前年比111%)で、税引前当期純利益は前年より60億円減の1,319億円(同96%)であった。

 京セラでは小さな組織に分けて市場の動きに即座に対応できる部門別採算管理によるアメーバ経営を行っており、金融収支、特別損益を加味した税引前当期純利益を各部門の事業利益として採算管理を行っている。

 事業利益が前年より60億円減益になった要因としては、部品事業の好調など他部門の増益504億円に対し、生活・環境部門でポリシリコン原料の長期購入契約による引当損500億円計上とソーラーエネルギー事業の不振により計564億円損失が発生したのが原因である。

 今期見通しは、売上高1兆6,500億円(同105%)で、税引前当期純利益1,900億円(同144%)を見込んでいる。

■中期事業成長戦略
 2021年3月期売上高2兆円、税引前利益率15%を目指して次の戦略を推進する。

 1.半導体製造装置向けファインセラミック部品の増産
 高性能化による部品のセラミックス化のニーズに対応して、鹿児島国分工場で新棟増築、滋賀八日市工場と米国ワシントン工場、ノースカロライナ工場で増設。

 2.IoT及び自動運転(ADAS)向けセラミックパッケージの増産
 京セラが12.9%と筆頭株主であるKDDIが新IoT通信を開始し、次世代移動体通信の5Gが今後本格化してくる。これらの新規受注拡大に対応するために鹿児島川内工場に新棟を建設。

 3.徹底した原価低減及び生産性倍増への取り組み
 製造部門横断のAIラボとロボット活用センターを設置し、製造工程での活用を全事業へ展開。

 4.新規事業創出に向けた研究開発体制の強化
 従来事業部門ごとに行っていたマーケティングと研究開発を部門を超えた横断的組織とし、社外との協業により開発のスピードアップを図る。

 温室効果ガス削減のため唯一苦戦しているソーラー事業の立て直しを図り、売上高2兆円、税引前利益3,000億円に挑む京セラの動きから目が離せない。(記事:市浩只義・記事一覧を見る

関連キーワード

関連記事