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子宮内膜に胚はどのように着床するか 東大の研究
子宮内膜間質による管腔上皮の剥離と栄養膜細胞活性化と胚浸潤誘導。(画像:東京大学発表資料より)[写真拡大]
着床は妊娠という一連の過程における重要なプロセスである。受精卵は胚となり、子宮内膜に接着してその中に入り込むわけであるが、それが具体的にどのように行われるのかは未知であった。それを明らかにしたのが今回の研究である。
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研究発表者には、東京大学医学部附属病院女性診療科・産科の廣田泰講師、同じく藤田知子特任研究員、循環器内科の武田憲彦助教(特任講師)、東京大学大学院医学系研究科産婦人科学講座の藤井知行教授、同じく大須賀穣教授が名を連ねている。
さて、着床の生理化学的メカニズムを知らなければならない重要な理由が一つある。着床障害が生殖医療における大きな課題だからである。現状、まだ着床障害の有効な診断法・治療法は確立されていない。
着床は、子宮内に入ってきた胚が子宮内膜と接着する過程すなわち「胚接着」と、その後に胚が子宮内膜に入り込む過程「胚浸潤」を経て成立する。これらの過程において、子宮と胚の間に何らかの精妙な相互作用が必須であるとは考えられたが、それが何なのかは謎であった。
今回、廣田泰講師らは、遺伝子改変マウスを用いた研究で、低酸素で誘導される転写因子である低酸素誘導因子(HIF)が子宮内膜において作用して胚浸潤の過程を調節していることと、HIFが子宮内膜間質において重要な働きを持っていることを明らかにした。
すなわちHIFは、子宮内膜管腔上皮をはがして子宮内膜間質を露出させ、胚が子宮内膜間質に入り込みやすくすると同時に、子宮内膜間質が胚とじかに接することによって胚が生存できるよう働きかけているのではないかという。
以上のように、着床障害における不妊の一因が明らかになった。今後、この研究成果をもとに、着床障害の新規診断・治療法の開発につなげていきたいという。
なお研究の詳細は、Journal of Clinical Investigationに掲載されている。(記事:藤沢文太・記事一覧を見る)
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