相談役や顧問の見直しと運用の厳格化、企業ガバナンスの強化に

2018年6月16日 21:57

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 日本企業の約6割に相談役・顧問がいるとされ、ほとんど元の経営トップが就任して来た。東芝の不正会計問題では、役員OBの相談役らが会社経営に影響力を与えていた実態が批判を浴びた。

【こちらも】相談役や顧問の廃止を魔女狩りにしない! 実効性のある見直しを

 会社法に規定がない顧問や相談役は、日本企業で慣習的に認められてきた特有の役職だ。海外の投資家や米議決権行使助言会社などは、正式な信任を株主から得ていない顧問・相談役が、どんな形で経営に関与するかが見えないとして懸念を表明している。

 このため相談役と顧問に関わる透明性の向上は、昨年6月に政府が重要政策として成長戦略に盛り込み、経産省と東証が開示の拡充を検討した。その結果、上場企業全社が提出義務を負っている「コーポレート・ガバナンス(企業統治)に関する報告書」に関連記載欄を新設するに至った。記載欄には相談役と顧問の氏名や業務内容と、常勤・非常勤といった勤務形態の表示や、報酬の有無と総額・個人別の支給額まで記載できる。

 開示の対象は社長や最高経営責任者(CEO)等の経営トップ経験者に限定され、開示をするかどうかはどの項目も企業の判断に任された。副社長や子会社トップは開示対象から外れている。開示は任意であるため非開示の罰則等はないが、投資家等から開示しない理由の説明を求められた場合には、適格な理由を明示することが求められるだろう。

 ソニーや東京電力ホールディングスは以前から顧問制度を廃止しているし、阪急阪神ホールディングスや、大手デパートの大丸や松坂屋を運営するJ.フロント リテイリング、日清紡ホールディングス、資生堂も昨年の株主総会をもって廃止した。

 04年半ばから相談役や顧問が存在しない武田薬品工業では、昨年長谷川会長が相談役に就任する際には、報酬や待遇についての具体的な内容を説明する書簡を作成し、「事業判断に関与する可能性がほとんどない」ことまで記述した。

 今年は既にカゴメ、伊藤忠商事、パナソニックが相談役・顧問を廃止、三菱商事では慣例で社長経験者が就いていた特別顧問の廃止が明らかになった。

 そのさなかに、トヨタ自動車は名誉会長、相談役、顧問を61人から9人に削減すると発表した。対象者が61人もいることがまず驚きだが、退任時の役職に応じて就くべき肩書や在任年数が慣例で概ね決まっていたという。今回、全ての相談役と顧問の契約をリセットして、今後は「役員人事案策定会議」が役割を厳密に審査する。相談役や顧問の存在そのものを悪にする狭量さはマイナスだ。胸を張って任命理由を説明する自信があれば、異論を唱える向きは減少する。

 透明性の高いガバナンスを日本の企業に定着させる絶好のタイミングと捉えて、過去のしがらみから脱却することを期待したい。(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る

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