国立環境研究所、毒性調査用試験生物「ムレミカヅキモ」の全ゲノムを解読

2018年6月4日 14:06

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ムレミカヅキモNIES-35株。(画像:国立環境研究所発表資料より)

ムレミカヅキモNIES-35株。(画像:国立環境研究所発表資料より)[写真拡大]

 ムレミカズキモというのはヨコワミドロ目に属する淡水棲の緑藻である。そのNIE-35株と呼ばれるものは、安定した増殖特性、重金属や農薬などの化学物質に対する高い感受性を持っているため、生態毒性の試験などに推奨種として世界で広く用いられている。そのムレミカヅキモの全ゲノム解析を、国立環境研究所が行った。

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 ムレミカヅキモそのものの基礎生物学的な研究、その化学物質毒性に対するメカニズムなどについてはまだ未知の部分が多かったため、これはその隙間を埋める研究である。

 ムレミカヅキモ(Raphidocelis subcapitata、旧名Pseudokirchneriella subcapitata)のNIES-35株の全ゲノム解読、そして緑藻の近縁種のゲノムとの比較解析を行ったところ、分かった事実は以下のようなものである。

 ムレミカヅキモは5,120万塩基対のゲノムを持つ。そのゲノム上には、1万3,383個のタンパク質をコードする遺伝子が存在している。同じ緑藻であるクラミドモナス(最初にゲノム全解析が行われた緑藻。1万7,741個のタンパク質をコードする遺伝子を持つ)と比較すると、NIES-35株はグルコース、アミノ酸、水分子の輸送体など、環境適応に関わるタンパク質を数多く持っていた。

 これは幅広い栄養環境や塩濃度での生育に適応したものだと考えられる。またNIES-35株は、鉄など様々な金属の細胞内への取り込みに利用される輸送体をコードする遺伝子も複数持っていた。これがこの種の持つ高い重金属感受性の一因である可能性が推測される。

 今後の可能性としては、環境適応や化学物質応答に関わる遺伝子の同定によって、生態毒性評価に使用可能なバイオマーカーの開発が期待できるという。

 なお、研究の詳細は、Scientific Reportsに掲載されている。(記事:藤沢文太・記事一覧を見る

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