三井化学のエクリオス 世界初の超薄型有機太陽電池の基板に採用

2018年6月1日 16:39

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超薄型有機太陽電池(図左)とポリイミド用液体材料エクリオス(図:三井化学の発表資料より)

超薄型有機太陽電池(図左)とポリイミド用液体材料エクリオス(図:三井化学の発表資料より)[写真拡大]

 三井化学は5月31日、新規開発した透明ポリイミド用液状材料「エクリオス」が、理研、東レ、科学技術振興機構(JST)等が開発した、高い耐熱性とエネルギー変換効率を兼ね備えた世界初の超薄型有機太陽電池に採用されたと発表した。

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 輝かしい技術や新製品を支えるのは素材の持つ性能だ。世界初の超薄型有機太陽電池もエクリオスという素材なくしては、実現しなかった。

 エクリオスは、耐熱性、耐薬品性、強靭性、寸法安定性に優れた無色・透明なポリイミド用液状材料だ。ガラス代替の耐熱基材、フレキシブル回路基板など、次世代エレクトロニクス関連製品への応用が期待される。

●超薄型有機太陽電池とは

 柔軟性の高い太陽電池は、衣服へ貼り付けるウェアラブルセンサーや電子デバイスを実現するための電源として期待される。理研と東レは4月17日、ウルトラフレキシブル有機半導体デバイス技術に加え、新しい半導体ポリマーを開発。超柔軟で極薄の有機太陽電池を開発したと発表した。

 超薄型有機太陽電池の厚さは3マイクロメートル。この太陽電池の最大エネルギー変換効率は10%で、100度の加熱でも素子劣化が無視できる高い耐熱性を持つ。また、大気環境中で80日保管後の性能劣化も20%以下だ。

 超薄型有機太陽電池は、表面平坦性と耐熱性に優れた透明ポリイミドを基板に採用。厚さ3マイクロメートルという超薄型化と100度の耐熱性に貢献する素材だ。

●エクリオスの特長

 性能劣化なく布地へ接着が可能で、透明性と柔軟性を保持。接着面の意匠性が維持される点は、エクリオスの優れた機械強度とフレキシブル性が生かしたものだ。

 加えて、ガラス転移点は260度以上、全光線透過率は88%以上であり、次世代のウェアラブル素材への活用が期待される。

●ポリイミド用液状材料(三井化学、エクリオス)のテクノロジー

 透明なエクリオスはワニスとフィルムでの提供が可能。高耐熱(ガラス転移点260度)タイプ、高靭性(耐折回数100万回)タイプ、低CTE(銅箔並み)タイプの3種類が開発済みだ。

 エクリオスの用途としては、ディスプレイ用ガラス代替、透明なフレキシブル回路基板、透明バインダー、白色フィラー添加品だ。韓国や中国で最先端の製品が生まれる現代、素材産業では日本がリードを保っているようだ。(記事:小池豊・記事一覧を見る

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