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仮想通貨包囲網の形成が進む(2) 交換業者を取り巻く環境が大きく変化
仮想通貨の代表格だったビットコインは、ひと頃の喧騒がウソのような静寂の中にある。言い方を変えれば、動きの少ない退屈な資産の中の一つになってしまったようだ。
【前回は】仮想通貨包囲網の形成が進む(1) G20での共通認識はどうなったのか?
3月に開催されたG20で、仮想通貨は通貨としての要件を欠き、市場の健全性に懸念を与える脱税と、マネーローンダリングの温床になりかねない側面を持ち、果てはテロ資金供与までも危惧される、と総括された。仮想通貨は「通貨」ではなく、「暗号資産」だと位置付けられた。
現在は世界の金融監督者で構成される金融活動作業部会(FATF)で、規制強化の具体化が検討され、交換業者の登録制や利用者の本人確認が欠かせない、との報告書がまとめられる予定だ。
誰もが「億り人」になれるのかとの幻想を生んだ狂騒は、みなし登録業者だったコインチェックが引き起こした、580億円にも及ぶ「NEM」流出騒動で大きく反転した。シンガポールを本拠地にしてプロジェクトを推進するNEM財団は、「アドレスを特定し、タグを付けるので換金不可能」と宣言したが、あっという間に換金率が5割を超えてしまい、NEM財団は追跡停止を宣言してギブアップした。流失した「NEM」のほとんどが別の仮想通貨に換金されてしまい、世界の人々が見守る中であっさりと巨額の金融犯罪が成立した。言ってみれば衆人環視の中で窃盗犯がまんまと逃亡したようなもので、仮想通貨の怪しいイメージを決定的にした。
仮想通貨交換業の営業が許されるのは正規の登録業者か、17年4月の改正資金決済法施行前から営業を続け、登録申請中の16社の「みなし業者」だけだった。そのうち8社は登録申請を取り下げ、4社は業務停止命令を受けた。コインチェックを含めた残る4社には業務改善命令が出された。「みなし業者」は全て処分を受けるか、登録申請を取り下げたことになる。
金融庁は「イノベーション促進」の観点から、当初の参入ハードルを低く設定していたが、コインチェック事件を契機にして事件・事故の再発防止にスタンスを移した。街の金券業者レベルの感覚で仮想通貨交換業を経営していた業者には、金融庁の本気の要求水準に適うほどの力量がなかった。大手の新規参入はあるが、マーケットの熱が冷めた状態で、規制が厳しくなれば、自ずと旨みは少なくなる。今までとは打って変わった、地道な商売になるのだろうか?(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る)
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