高エネ研、新型加速器「スーパーKEKB」が稼働 宇宙誕生の謎に迫る

2018年3月27日 06:39

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SuperKEKBプロジェクト全体図(図:高エネルギー加速器研究機構の発表資料より)

SuperKEKBプロジェクト全体図(図:高エネルギー加速器研究機構の発表資料より)[写真拡大]

  •  SuperKEKB加速器(写真:高エネルギー加速器研究機構の発表資料より)

 高エネルギー加速器研究機構(高エネ研)は22日、日本最大の粒子加速器スーパーKEKBが稼働したと発表した。4月には衝突実験を開始、新計測器の改造を経て、2019年2月から本格稼働の予定だ。

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 スーパーKEKB加速器は、2010年まで運転を続けた前身のKEKB加速器を大幅にグレードアップしたものだ。 KEKB加速器と比較して、40倍の衝突性能を目指す。

 138億年前、誕生した宇宙では、「物質」と電気的な性質が逆の「反物質」が同じ数存在したと考えられている。しかし、その後なぜ反物質は減り、物質だけが残ったかは、宇宙物理学の大きな謎だ。スーパーKEKBを用いた実験は、宇宙誕生の初期に起きたであろう反応を人工的に再現、反物質が消えた謎に迫る。

●前身のKEKBは、ノーベル物理学賞の理論を実証

 2008年のノーベル物理学賞は益川敏英氏と小林誠氏が受賞。タイトルは、「クォークがすくなくとも3世代(6種類)存在することを予言するCP対称性の破れの起源の発見」だ。

 両氏が論文を発表した1972年当時は、物質の最小構成要素であるクォーク粒子ですら、その存在を信じる研究者は稀であった。素粒子物理学で当時謎であった「CP対称性の破れ」を説明するためには、6種類以上のクォークが存在すればそれが説明できるという革命的な理論を提唱。

 KEKBでの実験で6種類全てのクォークの存在を確認。その予言通り「CP対称性の破れ」が実験的に確認され、ノーベル物理学賞を受賞した。

 ところが、この益川・小林理論でも反物質が消えた理由を説明できる訳ではないらしい。今回稼働するスーパーKEKBがこの反物質の謎に迫る。

●スーパーKEKBの特長

 1周3キロメートルの円形装置と計測器からなる。円形装置の中を、マイナスの電気を帯びた電子とプラスの電気を帯びた陽電子を、光の速さまで加速し、正面衝突させる。その衝突性能はKEKBの40倍だ。

 そして、衝突の際に発生した素粒子の振る舞いを直径8メートルの新型測定器で調べる。その計測できるデータ量は、従来に比べて50倍になる。この実験データを詳細に解析することで、物質と反物質の理論構築に挑む。

●加速器(高エネ研、スーパーKEKB)のテクノロジー

 宇宙の誕生初期に起こったはずの現象を再現し、未知の粒子や反物質の謎に迫る。そのために、電子と陽電子を光の速度まで加速、正面衝突させ、計測する。

 計測するデータ量は、50倍の100ペタバイト(ペタは千兆)になる。従来のコンピュータパワーの50倍が必要になるが、2016年にIBMを採用したようだ。

 衝突を大幅に高めるために、P.ライモンディが発案したナノ・ビーム方式を世界で初めて採用。衝突性能を40倍に高めた。

 国際連携も重要な要素だ。スーパーKEKBを使った研究には、世界20カ国超えるの700人以上の研究者が参加する予定だ。(記事:小池豊・記事一覧を見る

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