中大とJAXA、ネコ用人工血液を開発 宇宙で高品質タンパク質結晶を生成

2018年3月20日 21:50

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図1. 遺伝子組換えネコ血清アルブミンの立体構造(写真:JAXAの発表資料より)

図1. 遺伝子組換えネコ血清アルブミンの立体構造(写真:JAXAの発表資料より)[写真拡大]

  • 図2.長期保存可能なネコ用人工血液(写真:JAXAの発表資料より)

 中央大学と宇宙航空研究開発機構(JAXA)は19日、ネコ用人工血液の開発に成功したと発表した。

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 地球上でペットとして飼われているネコの数は6億2,500万頭、イヌは4億2,500万頭という。旺盛なペット需要と相まって、動物医療に対する需要も増加。この動物医療の現場での悩みは輸血用の血液だという。

 動物病院では輸血が必要な手術も増えているが、輸血用の血液を備蓄する体制ができていない。輸血が必要な重症動物については、獣医自身が自らドナーを探し血液を準備する。ペットの輸血療法における最大の課題は、血液を提供してくれるドナーの確保だ。

 今回の発表は、ドナーの確保はもとより、血液適合性試験も不要になる。動物医療の現場が抱える深刻な輸血液不足の問題を解決する革新的な発明だ。

 詳細は、3月19日に英国王立化学会の学術誌「ジャーナル・オブ・マテリアル・ケミストリーB(Journal of Materials Chemistry B)」の電子版(Accepted Manuscript)に掲載されている。

●人工血液の基礎実験は宇宙で

 「高品質タンパク質結晶生成実験」プロジェクトは、JAXAがこれまでに獲得・蓄積してきた結晶生成技術を適用し、ISS「きぼう」日本実験棟において高品質なタンパク質結晶を生成。無重力の環境が高品質のタンパク質結晶を生成するのに役立つ。

 先ず、遺伝子組換え技術を用いてネコ血清アルブミンを人工的に生成。そして、「きぼう」日本実験棟にてネコ血清アルブミンを結晶化し、X線結晶構造解析によって立体構造を世界で初めて解明。宇宙の微小重力環境で作成された良質な結晶(図1)は、高分解能解析に適しているという。

 この宇宙実験で確認したネコ血清アルブミンを、ウシ赤血球から精製したヘモグロビンで包み込んだヘモアクト-Fが人工血液だ。

●人工血液の特長

 原料はヘモグロビン、遺伝子組換えネコ血清アルブミン、市販の架橋剤のみ。製造工程は2ステップと少なく、簡単に合成できる(図2)。また、特殊な装置も必要ないという。

 この人工血液は長期保存が可能だ。溶液あるいは粉末として動物病院に常備し、いつでも供給できる体制の確立は、緊急時の大量需要に即応できる。

 また、血液型がなく、ウイルス感染の心配もなく、どのネコにも使用できる人工血液の市場範囲は、先進国・新興国を含む全世界規模に及ぶ。赤血球代替物としてはもちろん、心不全・脳梗塞・呼吸不全などによる虚血部位への酸素供給液、体外循環回路の補填液、癌治療用増感剤、などとしての応用が考えられるという。(記事:小池豊・記事一覧を見る

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