幼児教育の無償化と待機児童解消 子育て支援で求められる施策とは?

2017年12月12日 10:50

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記事提供元:エコノミックニュース

就学前教育の義務教育(無償)化について、是非実現して欲しいが約6割。一方で、就学前教育の義務教育(無償)化と待機児童解消では、71.6%が待機児童解消が優先事項と回答した。

就学前教育の義務教育(無償)化について、是非実現して欲しいが約6割。一方で、就学前教育の義務教育(無償)化と待機児童解消では、71.6%が待機児童解消が優先事項と回答した。[写真拡大]

 政府はこれまでの人生100年時代構想会議や与党の議論を踏まえ、今年12月に教育無償化を柱とする2兆円規模の政策パッケージを閣議決定する。2兆円のうち幼児教育と保育の無償化には約8千億円を充て、認可保育所に通う3~5歳児は全て無償とする方向だ。安倍首相は新しく政策の看板に掲げた「人づくり革命」の一環として、幼児教育無償化を掲げ、急ピッチで施策を進めている。幼児教育の重要性や少子化の防止、家庭の経済状況による学力格差の是正など大きな枠組みでのビジョンが求められているが、まず必要なのが、無償化なのだろうか。

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 近年では、妊娠出産のあたりから「保活」と呼ばれる子供を認可保育所に入園させるための活動を意識し始める夫婦は多いだろう。特に、待機児童にならないよう育児休業の期間を調整したり、引っ越しをしたりするなどの積極的な活動が求められている。厚労省は今年3月、“保活”の負担を減らすため、妊娠中から認可保育施設の申し込みを受け付けるよう、自治体に対応を促した。第1子ではない場合、産後に申し込みするときは赤ちゃんと上の子どもを連れていくケースなどもあり、歓迎する声も聞かれた一方で、保活だけを早めてもそもそも認可保育所の受け皿が少ない、など抜本的な解決を求める声も多くあった。

 ブライト・ウェイが発行する育児情報誌mikuが実施した、子育て家族の意識や生活状況に関するアンケ-トでは、就学前教育の義務教育(無償)化について、是非実現して欲しいが約6割。一方で、就学前教育の義務教育(無償)化と待機児童解消では、71.6%が待機児童解消が優先事項と回答している。希望しても認可施設に入れず、保育料が施設ごとに異なる認可外施設では、月5万円を超える施設も少なくない為、実質“無償”とはならず不公平となる場合もある。今回の政策パッケージにおいても補助対象とする認可外施設の範囲などには踏み込まない方向で、新設する専門家会議で改めて検討し、来夏までに結論を出すとのこと。

 順序として、まずは受け皿を増やし、待機児童問題の解決に注力してほしい、という声が多く挙がった。この背景には、限定的かつ対症療法的な施策というよりは、「教育費」や「保活」に追われること無く、最低限の余裕を持った子育てを行いたい。その為の環境整備を求める声が反映されていると考えられる。

 幼児教育の先進国として引き合いに出されることの多いフランスでは、1994年に1.66と底を打った出生率が、2010年には2.00超まで回復している。国民性や文化の相違はあるにしろ、少子化に悩む先進諸国、とりわけ深刻化が懸念される日本においてフランスの育児システムから学ぶべきことは多いだろう。特に、成長のスピードなどを含めた子どもの多様性を社会全体で享受する姿勢は競争社会において母親が抱える不安や劣等感などを緩和し、母親自身が活き活きと子育てができる環境の構築につながっているように思われる。とにかく少子化問題は深刻であり、かつてない柔軟な思考が求められている。政府は3000億円を投じて、平成32年度末までに32万人分の保育の受け皿整備も行うという。こちらの成果に期待したい。(編集担当:久保田雄城)

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