ふるさと納税「返礼品3割まで」が生み出した混乱

2017年11月30日 15:21

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 いわゆる「ふるさと納税制度」が発足したのは2007年。第一次安倍政権下で当時の総務大臣(現、官房長官)だった菅義偉氏が「地方創生策」の一策とし発案し、スタート、その後、人気となった。安倍政権は15年から寄付額の上限を2倍とし、ブームを煽ることとなった。

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 だが時間の経過とともに、「豪華な返戻金目的の寄付をする人が殆ど。寄付されたお金を地元のために使い、地方を活性化する本来の趣旨から外れているのではないか」という批判が高まった。現政権は態度を一変させた。今年7月に総務省は政権の意向を受ける形で、「寄付金に対する返礼品(額)の還元率を3割以下にする」ように自治体に通達した。

 これを契機に大別すると二つの問題が急浮上した。

 例えば宮崎県都城市。15-16年度寄付金が連続して全国1となった自治体である。返戻品の宮崎牛や地元ブランド豚肉、芋焼酎が寄付金集めの原動力と目されていた。が一転「返礼品額3割以下」。地元の酪農家や焼酎業者は、キツネにつままれた。というより「死活問題」になりかねない事態に遭遇した。どんな生産業でも、需要に見合った供給体制を整備して臨むのが当然の理。極論すると去年までは「10」だった需要に対し「3」体制で臨めと上からのお達しを受けても、これ以上の無理難題はないと言って過言ではない。

 一方「3割」制限は、自治体の返戻品対応の頭を痛めた。人気商品となり相当額の寄付金を集めていた自治体ほど、それは深刻だった。

 例えば長野県伊那市。16年度は全国2位の寄付金(72億500万円)を集めた自治体である。主力の返礼品は家電が主だった。同様の返礼品を続けるには「3割」では、到底成り立たない。絞りに絞った知恵の結果が太めのタレントを使いその激やせぶりで人気急上昇中のフィットネスクラブを運営・展開するライザップとの提携。返礼品に全国どこでも使用できるライザップジムの無料券。しかし非難が急浮上している。「地元の魅力を発信するために、地元ならでは返礼品こそが筋」という指摘である。説得力が伴う。

 ふるさと納税制度は、大きな曲がり角を迎えたようである。(記事:千葉明・記事一覧を見る

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