政府、高所得の会社員増税の方向で検討へ

2017年11月18日 19:10

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 政府は2018年度税制改正大綱に盛り込むことを目指す所得税改革について与党と調整に入った。会社員の給与収入から差し引ける給与所得控除を縮小する一方で、全納税者が適用される基礎控除を引き上げることで、働き方の違いによる税格差を是正するのが狙い。増税となる高所得者層の反発が予想される。

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 給与所得控除とは会社員の所得税を計算する際、スーツ代などを必要経費とみなし、収入に応じて定められた計算式で求めた金額を差し引ける仕組み。控除額は収入に応じて65万円から段階的に増え年収1,000万円の場合、上限となる220万円が控除される。今回の税制改革では給与収入額に関わらず控除額を一律に減らし、さらに上限額も下げる案を軸に検討する。また納税者一律に適用される基礎控除は、現在の38万円を50万円程度に引き上げる案が有力で、自営業など会社員以外の人は減税となる。

 現在は会社と同じような働き方をしても給与所得控除は会社員しか対象にならず、政府では働き方により生じる格差を問題視。年収800万~900万円を下回る会社員は基礎控除の拡大分と相殺して負担増とならない範囲で給与所得控除を調整していく。一方、年収800万~900万円を超える会社員は増税となるが、実現すれは、税格差の是正には一定の効果が見込める。

 昨年度は配偶者控除の見直し、また2014年度には給与所得控除及び対象となる給与収入の引き下げの経緯もあり、高所得者層の反発が予想される。政府は増減税が同額となる税収中立の立場を念頭に置いているが、依然として「取りやすいところから取る」姿勢は変わっていない。大規模な金融緩和による景気回復の声もあるものの肝心な給与収入は増えておらず、実感がない中での増税は景気にも水を差しかねない。2019年10月には消費税10%への増税も控えており、慎重に進められることが求められる。

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