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銀河の中心核がより小さなブラックホールを呑み込んでいた
すばる望遠鏡の超広視野主焦点カメラHyper Suprime-Cam(ハイパー・シュプリーム・カム、HSC)で撮影されたメシエ77の深撮像画像。(画像:国立天文台発表資料より)[写真拡大]
セイファート銀河は、その中心に莫大なエネルギーを放出する「活動銀河核」を持つ。その正体は太陽1,000万個分ほどの質量を持った超巨大ブラックホールだと考えられているが、それが活動を続けている理由について、「衛星銀河」と呼ばれる小型の銀河をブラックホールごと吸収したためである、という理論を裏付ける観測データが得られたという。
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セイファート銀河。またの名をメシエ77、あるいはNGC1068ともいう。今から70年以上前、天文学者カール・セイファートが発見したことからこの名がある。その特徴は、中心核からジェットや強烈な光を放出する、活動的な銀河だということである。
通常、ブラックホールというものは暗い。活動銀河核が活動銀河核であるためには、膨大な量のガスが供給し続けられなければならない。だが、銀河の中心核に、銀河の外側から物質を届けるのはそう簡単ではない。基本的に、ブラックホールの周辺には遠心力が働くからだ。
これに理論的説明が示されたのは1999年のことである。日本の天文学者、谷口義明教授(現在は放送大学教授)は、一つの論文の中で、セイファート銀河はブラックホールを含んだ別の衛星銀河を呑み込んだのではないか、という仮説を提唱した。
セイファート銀河の規模で、ただの小型銀河を呑み込めば小さい方の銀河はすぐ壊れてしまうし、大きな銀河と合体したのならば銀河の形状からそれと知れるはずである。だが、ブラックホールだけがセイファート銀河の中心核に吸い込まれたのであると考えれば、現状を説明できる、と谷口教授は考えた。
問題は、それをどう裏付けるかである。当時の観測技術では、谷口教授のアイデアを実証するすべはなかった。だが2016年末に行われた観測によって、セイファート銀河の周辺に、吸収された衛星銀河の残滓たる淡い構造体が発見され、理論は実証を得ることになったのだ。
なお、この研究成果は、『日本天文学会欧文研究報告(Publications of the Astronomical Society of Japan)』オンライン版で公開されている。(記事:藤沢文太・記事一覧を見る)
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