産総研、グラムの新たな定義に用いられる「プランク定数」を高精度で測定

2017年10月25日 12:04

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産総研で保管する日本国キログラム原器。(画像:産業技術総合研究所発表資料より)

産総研で保管する日本国キログラム原器。(画像:産業技術総合研究所発表資料より)[写真拡大]

 質量の単位「グラム」の定義が、来年にも変更される見通しとなっている。新たな定義にはマックス・プランクの物理定数「プランク定数」が用いられる予定なのだが、この高水準の計測値を、日本の産業技術総合研究所(産総研)が割り出すことに成功した。

【こちらも】人工物によって定義される最後のSI基本単位「キログラム」の再定義、2018年予定

 度量衡、という言葉がある。長さと量と重さの単位のことを指す。これらの統一的な定義を示し、また普及させることは、古くは秦の始皇帝の時代から、為政者の重要な役割の一つであった。

 時代は変わってもその重要性そのものに代わりはない。長さのメートル法や、重さのグラム単位は、国際的な統一定義を与えられ、世界人類の共有するところとなっている。

 ちなみに1メートルは古くは「北極点と赤道の距離の1,000万分の1」であったが、今日の定義では「真空中で1秒の299,792,458分の1の時間に光が進む行程の長さ」とされている。

 こういった具合に、現代の単位のほとんどは何らかの最新の科学に基づいた普遍の量を目安に定められているのだが、グラムだけは違う。1キログラムの当初の定義は「水1リットルの重さ」であったが、今日では、世界に一つしかない「国際キログラム原器」という人工物体の重量が1キログラムである、と定義されている。

 しかしこれはさすがに時代の趨勢に合わなくなりつつあるので、改正するかどうかを来年審議する予定になっている。プランク定数とは、1900年に物理学者マックス・プランクが導入した、光子のエネルギーと振動数の比例関係を表す定数である。

 今回、産総研の研究では、1億分の24、1キログラムあたり24ナノグラムという精度でプランク定数が割り出された。これは、国際キログラム原器の質量安定性、1キログラムあたり50ナノグラムを凌ぐ値だ。

 2018年11月の第26回国際度量衡総会(CGPM)において、産総研が決定したプランク定数に基づく新しいキログラム定義が採用されるかどうか、検討されることになる。

 なお、研究の詳細は、英国物理学会誌Metrologiaに掲載されている。(記事:藤沢文太・記事一覧を見る

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