大陸横断鉄道というユニバーサルドリーム

2017年9月19日 06:05

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ロシアからモンゴルを経由し北京を結ぶモンゴル縦貫鉄道(トランス・シベリア鉄道)。

ロシアからモンゴルを経由し北京を結ぶモンゴル縦貫鉄道(トランス・シベリア鉄道)。[写真拡大]

 鉄道があることで国同士の行き来が可能にもなることもある。いまや航空路が主に移行したとはいえ、欧州では旧くから鉄道を通じた交流が盛んである。ドーバー海峡下をトンネルで潜って渡る鉄道は英仏交流に寄与したと云えるのかも知れない。

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 一方、我々が済むアジアという地域。世界の人口の半分を占め、気候は湿潤、隣り合う集落同士が根っこの部分で共存共栄しようとする文化が占める地域。世界史上稀に見られるほどの人、人材の集積体たる地域。気候区分はモンスーン地域で人の性質が全体には「情」の文化、そうした地域全般に鉄道の機構は合うものだろうか?

 欧州から中央アジアを通り抜けシンガポールに至るTAR(Trans-Asian Railway)という構想がある。経済圏構成への見方により意見が分かれるが、それでも前を向いて活かそうとする構想が『一帯一路』であろう。鉄路をいま流行りの「ブロックチェーン」的に捉える見方もあれば、数学的に捉えて、行き先最適化問題とみる見方や、技術・経済の領域から、IT生産工程最適化問題とも捉えられる。

 この構想、アジア的な情で読み解けば、遊牧民の旅情にも行き着くし、アジアンネットワークを占める知的富裕層たちが押しなべて得意にしている数学問題で捉えるのならば、経済の在り方と基盤を創り直すくらいのインパクトを持ち得るのかも知れない。鉄道は人と物流を司ることで、固まった体系を時に大きく変えるものだからである。

 日本における鉄道は、周知されているように英国からの輸入技術である。しかし、導入に当たっては国内事情を十分に斟酌した形で、首都圏の成長と発展を目論み、同時に江戸期以来の地勢的条件を満たした路線が選ばれ、川を跨ぐ方向で発展して来た。例えば、いまや欠かせない大動脈である東海道線、そしてそれを高速化した新幹線は、多摩川、相模川、富士川、天竜川、揖斐川、ほか、各々地域の物流の動脈であった河川域をひょいっと橋で渡ることで地域間を繋いで来たと云える。最後は淀川を渡ることなく、沿って走り京都から大阪に至るところが、また大阪をただ通過するだけではない意味が感じさせられるのだが、その辺り一帯一路構想の根底にある多元的ネットワークを構成しようとする思想とは、全体に似て非なるものかも知れない。

 さて、この構想を横合いから眺めている格好の今の日本は、どのように参画し、また国際社会での立ち位置を占め、そして、次段階への発展、或いは、社会課題の整理に導く海図を創り出せるか。新世代の日本富裕層は金融と通貨に強い。また、語学とITにも急ピッチで世界レベルに追いつこうとしている。この発想の根幹が数学問題に行き着くのは間違いないところではあるので、新たなるアジアンネットワークが、鉄道敷設を題材にしたネットワーク形成の過程の中で、日本の富裕層の参画を呼び込み、投資活動や企業活動に至る設備・ネットワーク等の資産形成に繋げ、次世代アジア圏における足場の確保を果たせる方向で賢い対応がなされることを期待したい。(記事:蛸山葵・記事一覧を見る

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