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宇宙開発に喫緊の課題、宇宙ゴミ除去のアストロスケールにJAXAが協力
デブリで汚染された宇宙のイメージ[写真拡大]
JAXAとアストロスケールは12日、宇宙ゴミ(デブリ)除去技術の共同研究を発表した。アストロスケールは、世界で唯一のデブリ除去を目指した日本発のベンチャー企業である。同社のデブリ除去実証衛星「ELSA-d」の開発において、JAXAがデブリ除去のために研究を進めているデブリへの接近・捕獲技術の検証にかかる試験技術を提供して協力するほか、軌道上において「ELSA-d」が取得する模擬デブリの画像データの評価を共同で行う。
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宇宙開発に各国がしのぎを削る中、役割を終えた衛星や残骸は、デブリとして地球の周りで増え続けている。さらに、デブリ同士が衝突し、デブリが増殖。やがて衛星の領域はなくなっていく。
宇宙開発での成果は、衛星放送、天気予報、GPS、船舶や飛行機の運航など、あらゆるシーンで活用されている。日本版GPSのように、衛星同士を連携させた構想など、先端の宇宙開発が進化する中で、その開発に水を差しかねない状況がやがて訪れる。
●デブリとは
宇宙空間において、制御不能になった人工物体をデブリ、またはスペースデブリと呼ぶ。役目を終えた人工衛星、壊れた人工衛星、人工衛星同士が衝突してできた破片等である。
直径10センチメートル以上のデブリは地上から望遠鏡等で把握でき、現在は1万7,000個以上あるという。他方、地上から観測できない数センチメートル以下のデブリは、1億個以上あるといわれる。
デブリは、秒速8キロメートルの速度で移動している。そのため、衝突エネルギーは、非常に大きく、人工衛星や宇宙ステーションの破壊へとつながる。現在は、デブリの軌道を検出し、人工衛星の軌道を変えて大きなデブリを避け、衝突を回避している。
●国際的な取り決め
デブリに関しては、国連宇宙空間平和利用委員会で原案を作成し、2007年に国連総会で採択されたガイドラインがある。このガイドラインは、デブリの発生抑制を目的とする。人工衛星はデブリが出ない設計にする、低軌道人工衛星は運用終了から25年以内に大気圏に再突入させるといった内容で、83の加盟国の自主的な取り組みに委ねられている。
●デブリ対策(アストロスケール、「IDEA OSG 1」、「ELSA-d」)のテクノロジー
アストロスケールでは、デブリの状況把握とデブリ除去の2つの衛星開発に取り組んでいる。シリーズCの資金調達で2,500万ドルを調達しており、2020年度に、デブリ除去サービスを開始する予定だ。
「IDEA OSG 1」は、デブリの状況を把握するための衛星である。今年中にロシアの宇宙基地から打ち上げるという。衛星には、JAXAが開発した「フィルム貫通型微小デブリセンサー」を搭載する。センサーにデブリが衝突すると内部の導電線が切断され、切断本数からデブリの大きさを推定する。それを解析することでデブリの地図を作る。この地図は、衛星打ち上げ検討に役立ち、デブリ除去と併せてビジネス化を目論む。
デブリ除去の衛星「ELSA-d」は、2019年度の打ち上げに向けて開発中という。軌道上で模擬デブリを捕獲、衛星ごと大気圏へ突入し燃え尽きる構想だ。デブリ捕獲は、国内の中小企業と共同開発したオリジナル粘着剤であるらしい。粘着剤は200グラムで、衛星のコストを抑え、接触すれば捕獲する確率は上がる。
最後に、同社の岡田光信CEOの起業は、ハーバード・ビジネス・スクールの教科書に取り上げられている。これは、世界に誇れるベンチャーの証であり、世界が黙殺してきた宇宙開発の喫緊の課題であるデブリ除去への挑戦でもあるのだ。(記事:小池豊・記事一覧を見る)
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