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金属の世界の常識を覆す、単結晶金属の量産プロセスを開発
異常粒成長により一つの結晶粒が粗大化する様子。(画像:東北大学発表資料より)[写真拡大]
金属というものは通常、多数の結晶粒によって構成される。だが、東北大学などの共同研究グループは、銅を主成分とする、形状記憶合金の単結晶部材を量産可能とする、画期的な製造プロセスを開発することに成功した。
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研究グループに参加したのは、東北大学、京都大学、古河テクノマテリアル社である。開発された金属は、主に建築分野における、耐震補強部材としての用途が期待されている。
そもそも、1994年のノースリッジ地震(アメリカ・ロサンゼルス)や、1995年の阪神・淡路大震災を受け、「大きな変形を受けてもすぐに形が元に戻る、超弾性の」形状記憶合金を、地震が生じた際に力がかかる部位に鉄筋の代わりに用いる試みが、アメリカを中心に研究されるようになった。
形状記憶合金そのものは多種存在し、様々に実用化されてはいるが、たとえば最も生産量が多く、カテーテルや歯列矯正ワイヤーなど医療分野で主に用いられているニッケル-チタン形状記憶合金は、建造物に用いるほどのサイズでは良好な超弾性特性が実現しにくい上、仮に出来たとしても高価につきすぎるという難点がある。そのため、低コストで高い超弾性を実現できる新しい形状記憶合金の量産技術が切望されていた。
今回の研究グループによる、銅-アルミ-マンガン形状記憶合金(以下、銅系形状記憶合金)の研究開発が始まったのは、2006年のことである。様々な研究から、超弾性の実現には、部材の単結晶化が不可欠であるということが判明した。しかし、それには通常、極めて高い製造コストがかかるというのが従来の常識であった。
しかし研究グループは、「熱処理の繰り返し」という単純でローコストな手段によって、合金を単結晶化する技術の開発に成功したのである。
なお、研究の詳細は、Nature Communications(電子版)に掲載されている。(記事:藤沢文太・記事一覧を見る)
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