『ひよっこ』が視聴率20%超え連発、精一杯生きる人を応援する人間賛歌のドラマ

2017年8月8日 22:06

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■『ひよっこ』が連続20%超えで好調

 2017年4月からスタートしたNHKの連続テレビ小説『ひよっこ』だが、7月に入ってから視聴率が好調となっている。物語が大きく動き出し、20日放送分から8月7日まで連続して20%を超える人気ぶりだ。視聴率が振るわないドラマも多い中での好調は、深い人間ドラマが込められているからだろう。

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■地方と都心の生活を描くドラマ

 『ひよっこ』は、1964年の東京オリンピックで盛り上がる日本を舞台にしている連続テレビ小説。茨城県北西部にある奥茨城村で育った谷田部みね子(有村架純)は田舎でずっと暮らすつもりでいた純粋な女の子だ。普段は家族と共に農作業に勤しむが、父の実(沢村一樹)はオリンピック事業の関係で東京へ出稼ぎに向かっていた。ときには奥茨城村にも帰って来ていたが、ある日を境に帰郷しないようになった。みね子は実を探すため、集団就職という形で上京することとなる。

 集団就職でラジオの製造工場に就職したみね子は、そこではじめて寮生活を経験しながらたくさんの人間と触れ合うようになっていく。同僚と衝突しながらも人間的に成長していくみね子だが、突如として工場が閉鎖する。途方にくれるみね子だったが、実が通っていたと思われる「すずふり亭」の主人・牧野鈴子(宮本信子)の計らいで雇ってもらうことになる。

 なんとか都心での生活基盤を築きつつあるみね子は、ある出来事をきっかけに女優の川本世津子(菅野美穂)に出会う。彼女はみね子に対して「会って欲しい人がいる」と告げるが、その人物こそが実だった。行方不明だった父親は記憶を失っている上、別の女性と一緒に生活していたという事実に驚愕するみね子。しかし、みね子は再び家族となるべく実と2人暮らしをすることを決意する。

■どの地域にだって人間が生きていることを表現

 『ひよっこ』の前半は何も知らない田舎娘が都会での奮闘記をコミカルに描いていた。しかし、ラストに向けて実とみね子を含め、家族の在り方に対して真摯に向き合う人間ドラマの様相を呈しはじめている。このコメディとシリアスのバランスが絶妙で、非常に見ごたえのあるドラマになっているようだ。

 同時に、地方が都心に搾取される部分に対して警鐘を鳴らすようなシーンもある。実が行方不明になった際、妻の美代子(木村佳乃)は警察に対して捜索を依頼する。しかし、警察は「いばらぎの出稼ぎ労働者なんて知らない」と突っぱねる。しかし、美代子は「いばらぎじゃありません、いばらきです」と反論し、さらに「出稼ぎ労働者じゃない、谷田部実を探して」と涙ながらに語る。地方が搾取されてばかりいる現実を突きつけると同時に、どのような場所でも1人の人間が生きていることを訴える名シーンだ。

 物語全体を通して、みね子は田舎と都心を行き来するだけでなく、仕事や住む場所を転々としていく。しかし、どの場所でもしっかりと生き抜き、様々な人と出会って成長していく。みね子自身もだが、どのような場所でも人間が泥臭く生きる姿をしっかり描いているところが、『ひよっこ』最大の魅力ではないかと感じている。(記事:藤田竜一・記事一覧を見る

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