169MHz帯を使ったドローンの遠隔制御飛行に成功

2017年8月3日 09:55

印刷

記事提供元:エコノミックニュース

次のステップとして、より長距離を隔てた通信実験を行い、169MHz帯利用の最大の特長について評価するとともに、画像伝送の可能性についても試行する予定

次のステップとして、より長距離を隔てた通信実験を行い、169MHz帯利用の最大の特長について評価するとともに、画像伝送の可能性についても試行する予定[写真拡大]

 これまでのドローンのほとんどは2.4GHz帯をその制御や状態把握、また一部、画像伝送にも用いているが、無線LANなど他からの干渉を受けやすいだけでなく、構造物や樹木、地形などにより、電波が途切れやすく、物流や災害対応などで想定されているような、操縦者から1km程度以上離れた場所でのドローンの安定な運用は困難だった。

【こちらも】KDDI、「スマートドローン」による4G LTE完全自律飛行実験に成功

 総務省は、平成28年8月、来るべきロボット社会到来への期待やドローンの長距離を隔てた運用や画像伝送のニーズに応えるため、新たに「無人移動体画像伝送システム」を制度化し、無線局免許の下で運用できるようになった。169MHz帯はその周波数帯の一つであり、2.4GHz帯等の従来の周波数に比べて、障害物を回り込み、 周囲の構造物等を反射して遠方に届きやすい特性を持っている。

 また、新たな制度によると、上空では10mW、地上では1Wまでの出力で運用でき、条件が良ければ10㎞以上の距離で遠隔制御できる可能性を秘めている。一方、169MHz帯は、周波数の幅が合計で約400kHz程度と比較的狭く、多くのロボットやドローンが同時に使用することは困難であるとともに、データの伝送速度も遅くなる。このため、通常使用する920MHz 帯から5GHz帯等の他の周波数帯が利用できなかったり干渉を受けたりした場合のバックアップ用としての使い方が想定されているが、これまで、実際に、この周波数を使ってロボットを制御したり、ドローンを飛行させて評価した例はなく、その通信品質に関するデータもなかった。

 内閣府 総合科学技術・イノベーション会議が主導する革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)タフ・ロボティクス・チャレンジの一環として、国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)および国立研究開発法人産業技術総合研究所(産総研)のグループは、169MHz帯を使ったドローンの遠隔制御飛行に初めて成功した。

 研究では、これまで通常時のドローン・ロボット制御用の無線方式として開発してきた920MHz帯の無線装置に、新たに制度化された周波数帯である169MHz帯の無線装置とそのアンテナを追加し、同じケースに収めることで、920MHz帯と169MHz帯の間で手動又は自動による遠隔切替えが可能なハイブリッド無線装置を実現した。そして、制度化後としては全国で初めて169MHz帯によるドローン・ロボット制御システムの評価を行うための実験試験局免許を取得し、地上の操縦者からドローンまで169MHz帯にて直接電波をつないで遠隔制御を行い、安定に飛行させることに成功した。

 実験では、初めに920MHz帯で操縦者端末とドローン側の間で通信を確立し、そのまま離陸上昇させ、上空高度30mほどになったところで周波数を169MHz帯に切り替え、ドローンの飛行状態への影響を調べた。その結果、操縦者が制御コマンドを送信してからドローンに届くまでの遅延時間は、920MHz帯では60ミリ秒ほどであったところ、169MHz帯では2秒ほどかかった。

 

 次のステップとして、より長距離を隔てた通信実験を行い、169MHz帯利用の最大の特長について評価するとともに、画像伝送の可能性についても試行する予定。また、920MHz帯と169MHz帯の間の切替え時間の短縮と、通常使う電波が弱くなったり途切れたりした場合の自動切替えについても、動作検証を行っていく予定であるとしている。(編集担当:慶尾六郎)

■関連記事
ロボットによる仕事の代替は3割程度 業務代替に対する意識調査
ブロックチェーン技術でドローン配送の荷物追跡 ウォルマートが特許出願
広がるドローン活用 河川管理プロジェクトで全天候型も
米ベンチャー企業が空飛ぶ車を開発 年内発売目指す
高所の送電線点検にドローンを起用する東京電力

※この記事はエコノミックニュースから提供を受けて配信しています。

関連キーワード

関連記事