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大腸がんの早期発見にAIを活用、NECなどが内視鏡診断支援システム開発
開発されたシステムの概要(写真: NECの発表資料より)[写真拡大]
●大腸がんの死亡率抑制は、大腸腫瘍性ポリープの積極的な内視鏡的摘除
国立がん研究センターとNECは10日、人工知能(AI)を活用した新たな内視鏡診断サポートシステムを開発したことを発表した。
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大腸がんの死亡率を抑制するためには、大腸腫瘍性ポリープの積極的な内視鏡的摘除が有効だ。これまでの研究では、大腸腫瘍性ポリープを内視鏡的に摘除することが、大腸がんの罹患率を76%~90%抑制し、死亡率を53%抑制するとの事例があるという。加えて、大腸内視鏡診断を受けていたにも関わらず、後に大腸がんに至るケースが約6%あり、その原因は、内視鏡診断時の見逃し(58%)だそうだ。この見逃しによる大腸がんに至る事例を極力なくすことを目的に、内視鏡診断サポートシステムは開発された。
今回開発されたサポートシステムでは、診断中に大腸腫瘍性ポリープを検出するため、患者の診断の重荷も増やすことなく、大腸腫瘍性ポリープの見逃しを回避する。更に、肉眼では認識が困難な平坦・陥凹性病変の画像をもAIに深層学習させ、肉眼での検出限界にも挑戦していくという。
●AIのキーテクノロジー
AIの知識獲得のキーテクノロジーは、「深層学習」が主流になったようだ。深層学習では、Convolutional Neural Networks(CNN)というAIの構造を決定し、学習データ群を読み込み、そのデータ群の特徴をAIに学習させておく。そして、AIに検出対象のデータ候補を与えると、深層学習した特徴と比べて、検出対象なのか否かを認識する。CNNの構造は、AIの要であり、ノウハウでもある。また、深層学習の期間は、年月単位と長く、学習するデータ群の確かさがAIの能力を左右する。つまり、人間が関与すべき領域である。
今回の発表では、約5,000の大腸がんの内視鏡画像を学習データとして活用し、発見率98%という認識性能を達成したという。今後は更に、国立がん研究センター内に蓄積されている1,600以上の肉眼では認識が困難な平坦・陥凹性病変を、AIに深層学習させて、大腸腫瘍性ポリープの検出精度を向上させるという。つまり、AIが深層学習するデータ群は、対象とする専門家の知見に基づいていることに価値がある。このデータ群を扱うのは人間であり、人間の積極的な関与がAIを信頼する上で必須であろう。
●AIが認識から判断へと進化するには、リアルタイム性は必須
今回の内視鏡診断サポートシステムで、NECが言及したリアルタイム性も、AIが認識から判断へと進化する上での必須な技術の一つであろう。AIが認識した結果を判断に使用するならば、判断をする前に認識処理は終了している必要があり、これをリアルタイム性と言う。
サポートシステムでは、大腸腫瘍性ポリープ検出と結果表示を約33ミリ秒で行う。そのために、GPGPU(General Purpose of computing on Graphics Processing Unit)という半導体のハードウェア技術を活用する。画像処理の高速化のみならず、AIの高速化にも必須な技術になっているという。(記事:小池豊・記事一覧を見る)
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