関連記事
慢性腎臓病、劇症肝炎に有効な新治療薬が登場
臓器の慢性的な炎症は、繊維化へと至る。(画像:東北大・広島大発表資料より)[写真拡大]
東北大学、岡山理科大学、広島大学などの共同研究グループは、慢性腎臓病や劇症肝炎の有効な治療薬となる新規化合物、Mitochonic acid 35(MA-35)を開発した。
【こちらも】猫の慢性腎臓病治療薬、4月より初の市場投入へ
慢性腎臓病というのは特定の病気ではない。腎臓の機能が慢性的に低下していく病気を総称してこう呼ぶ。そのほとんどは、慢性的な腎臓の炎症から繊維化(組織が損傷を受けて修復される際に、コラーゲンなどが蓄積して組織が硬化する現象)を生じ、最終的に腎線維症へと至る。
慢性腎臓病において一般的なのは透析であり、その導入患者数は今日、増加の一途を辿っているといわれる。しかし透析によって線維化が抑制されるわけではないし、現状、厳密に腎繊維化を防止すると認められた治療法は存在しないという。
腎臓の繊維化にはTGF-β1(transforming growth factor-β1、トランスフォーミング増殖因子-β1)という、細胞の創傷治癒に関わる一種の増殖因子(サイトカインと呼ばれるたんぱく質の一種)が関わっている。多くの慢性腎臓病において、TGF-β1にシグナル異常が認められるという。
次に、劇症肝炎について解説する。劇症肝炎には有効な治療法が肝移植しか存在せず、種々の点で肝移植はハードルの高い治療法であり、劇症肝炎は結果として救命率が低く、予後不良の難病である。
劇症肝炎にはTNA-α(tumor necrosis factor-α、腫瘍壊死因子-α)という、こちらもサイトカインが関わっており、肝臓を炎症へと誘導する。これはマクロファージや単球、T細胞などによって産出されるものである。
さて、今回開発されたMA-35は、簡単に説明すれば、腎臓の線維化因子であるTGF-β1と、劇症肝炎の因子であるTNA-αの双方を抑制する効果を持った物質である。いずれも、動物実験においては、それぞれの疾患を大きく抑制することが既に確かめられている。
なお、この研究の詳細は、Scientific Reports誌に掲載されている。(記事:藤沢文太・記事一覧を見る)
スポンサードリンク