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【柔道】全日本女子柔道選手権総括 ベテランの復活と若手の躍進
16日に横浜文化体育館で行われた全日本女子柔道選手権だったが、ベテランの復活と将来を嘱望される若手の躍進が目立った大会だった。
【世界選手権代表は】世界選手権女子78キロ超級、朝比奈沙羅の他2名を選出
大会を振り返る。
■田知本、緒方らベテランの復活
まず、印象に残ったのは田知本愛(ALSOK)の復活だった。昨年の全日本は、決勝で山部佳苗(ミキハウス)に敗れ、代表の座を逃した。10カ月ぶりの実戦となった2月のグランプリ(GP)・デュッセルドルフでは2位に入ったものの、選抜体重別前に再び左膝を負傷。ほぼぶっつけ本番での強行出場となった。
しかし、本番では怪我の影響を感じさせず、準々決勝までの3試合は全て一本勝ち。決勝では後輩の朝比奈沙羅(東海大学)に敗れたものの、5年連続の決勝進出を果たした。
試合後は「妹(田知本遥)に励まされながらここまで来れた。やっと止まっていた時間が動き出した」と語った。
次に印象に残ったのが緒方亜香里(了徳寺学園職)の試合。緒方は10年、11年の世界選手権で銅メダルと銀メダルを獲得。12年ロンドン五輪、翌年の世界選手権(リオデジャネイロ)にも選出された。
しかし、13年に右膝を痛めて14年に手術を受けると代表から遠ざかり、目標にしていたリオ五輪代表にも選出されなかった。一時は引退も考えたものの、「ボロボロになるまでもう少し頑張ってみよう」と決意して現役を続行。
今大会は、全盛期を彷彿とさせる大きい相手にも臆することなく奥襟をつかむ柔道を見せ、最後は準決勝で田知本に敗れたものの、13年以来4年ぶりとなる3位入賞を果たした。
■若い力の台頭
今大会では、若い力の台頭も見られた。優勝した朝比奈は20歳。3位に入った高山莉加は22歳で東京五輪世代だ。その他にも児玉ひかるや昨年3位入賞した梅津志悠(ともに三井住友海上)、山本沙羅(ミキハウス)など、若手の台頭が目立った。
その中でも大健闘を見せたのが児玉ひかる。今春福岡の敬愛高校を卒業して、三井住友海上に入社したばかりの18歳。九州予選ではライバル素根輝(南筑高校)に勝ち、九州チャンピオンとして出場。
本戦では佐俣優衣(帝京大学)、後藤美和(日光警備保障)相手に勝ち上がり、準々決勝では準優勝した田知本と対戦。懸命に食い下がったものの大外刈で一本負けした。
先述した素根は2年後輩。福岡県内でしのぎを削る関係だった。インターハイの予選では勝ったものの、9月の全日本ジュニアでは指導2を取られて敗戦。
その後、素根は講道館杯で2位。続くGDS東京でも2位。初めての海外での国際大会となるGPデュッセルドルフでは3位に入るなど、シニアでの実績を積み重ねていき、差を広げられつつあった。
しかし九州選手権で久しぶりに勝利して、全日本に出場した。これからも素根とは何度も対戦機会があるだろうし、勝ったり負けたりを繰り返すだろう。シニアでの実績は素根が一歩リードしているため、シニアでは追う立場。
選出された国際大会で結果を残し、代表争いに食い込むことを目指す。
■ベテランと若手の切磋琢磨を期待
今回準優勝した田知本は東京五輪を32歳、山部は29歳で迎える。両者ともベテランと呼ばれる年齢となるが、重量級は選手寿命も長いので老け込む年齢ではない。今回優勝した朝比奈は23歳、山本は25歳、今回出場しなかったが素根は19歳、児玉は22歳で東京五輪を迎える。
今回は朝比奈が優勝して世代交代を印象づける大会となったが、両ベテランもこのままでは終わらないだろう。
78キロ超級以外にも57キロ級の松本薫(ベネシード)や52キロ級の中村美里(三井住友海上)といったベテランも、虎視眈々と東京五輪を狙っている。どの階級にも将来を嘱望される若手がいるので、ベテランと若手の切磋琢磨が期待できる。
東京五輪まであと3年。これからもお互いに切磋琢磨して、代表争いすることを期待したい。(記事:夏目玲奈・記事一覧を見る)
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