光子一つをも観測できる「光子顕微鏡」開発、産総研

2017年4月6日 11:58

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開発された光子顕微鏡、プロトタイプ。(産総研発表資料より)

開発された光子顕微鏡、プロトタイプ。(産総研発表資料より)[写真拡大]

 産業技術総合研究所(産総研)は、1個の光子をも観測可能で、さらにその波長(色は光子の波長に関連する)さえも分かる超高感度顕微鏡、「光子顕微鏡」の開発に成功した。

 この光子顕微鏡はごくわずかな光だけでも観測することができ、従来の光学顕微鏡では観測することのできない弱い光のもとでも、明瞭なカラー画像を観察することができる。

 ところで、「光学顕微鏡で見えない光度や大きさのものなら、電子顕微鏡で見ればいいのではないか?」と思われた方もいるかもしれない。電子顕微鏡と、この光子顕微鏡の最も重要な違いは、ごく簡単である。実は、電子顕微鏡というものは、モノクロの画像しか受映することができない。これに対し、光子顕微鏡は対象の色が分かる。これが最も決定的な両者の差だ。

 電子顕微鏡はモノクロの画像しか表示できない、という事実、ご存知だったであろうか?なぜ電子顕微鏡は色を識別することができないか。かいつまんで説明すると、電子顕微鏡が観測するものは、可視光線ではなく、電子線である。可視光線は、複数の波長の組み合わせによって色を生じさせる。対して電子線は単一の波長しか持たない。電子顕微鏡は、この電子線をモノクロの可視光線に変換して表示するのであるが、もとが単一の波長しか持たない電子線を像源としているため、カラーに変換することが原理的に不可能なのである。

 しかし当然のことながら、とても小さいもの、光の弱いものを、カラーで観察する需要というのも、存在している。そこで発明されたのが光子顕微鏡である、というわけだ。

 光子顕微鏡は、超伝導現象を利用した、超伝導光センサーを顕微鏡の光検出器として利用している。今後の利用法としては、医療・バイオ分野、半導体分野などでの、生体細胞の微弱発光の観察、微量化学物質の蛍光分析など、研究・開発の世界での利用が期待できるという。

 なお、技術の詳細は、Scientific Reports (Nature Publishing Group)にオンライン掲載されている。(記事:藤沢文太・記事一覧を見る

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