海外事業者との協業・提携でグローバル化促進する日本企業

2017年2月26日 11:33

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記事提供元:エコノミックニュース

ロームとimecが共同開発した IoT無線トランシーバ向けPLL回路。業界初の完全デジタル回路で安定した信号を送り出し、1mWを下回る低消費電力を実現。海外企業との協業が新たなイノベーションをもたらしている。

ロームとimecが共同開発した IoT無線トランシーバ向けPLL回路。業界初の完全デジタル回路で安定した信号を送り出し、1mWを下回る低消費電力を実現。海外企業との協業が新たなイノベーションをもたらしている。[写真拡大]

 日本企業のグローバル化が加速する中、海外の事業者と提携し、成果を収める企業が増えている。海外事業者と提携し、協業することにはどんなメリットがあるのだろうか。

 海外事業者との協業によって生まれるメリットといえば、やはり地元販路の拡大だろう。地元の企業と手を組むことで、先方が持っている販路を利用できるほか、先方が長年の事業で培ってきた信用なども享受することができる。日本企業が海外でそれらを一から築こうと思えば、相当な時間とコストがかかるだろう。M&Aなどで買収するよりも、イメージ面でもコスト面でもメリットは大きいのではないか。また、協業することで、商品やサービスの充実、品質向上などが迅速に行われることも大きなメリットだ。両社の技術を持ち寄ることで、問題を解決したり、これまでになかったような新商品が開発されたりするかもしれない。日本企業は高い技術力で信頼を得ているので、海外の企業にとっても協業する価値は高いだろう。

 たとえば先般、電子部品大手のロームはベルギーのナノテク技術の国際研究機関であるimecとの協業で、IoT無線トランシーバ向けに業界初の完全デジタル回路で安定した信号を送り出すPLL回路の開発を発表した。

 ロームは数年前から無線通信分野に注力しており、2012年にはROHM WSN(Wireless Sensor Network) プロジェクト活動を開始。同年、EnOcean Allianceプロモータにも就任している。

 翌13年には 次世代通信向け超低消費電トランシーバの検討を始め、この時点でimecとコンタクトをとり、協議を始めたという。14年には共同研究契約を締結し、ロームとグループ会社のラピスセミコンダクタで研究チーム体制構築imecとの共同研究を開始している。

 PLL(位相同期)の回路は、無線通信機の中で最も電力を消費する部品ブロックといわれており、全体の約30%を占めるそうだ。今回、両社が開発した回路は1mWを下回る低消費電力を実現。長時間駆動が必要とされるIoT無線トランシーバに最適な回路として注目を集めそうだ。この事例は日本の企業と、海外の研究機関が連携し、業界でも最先端の技術開発に成功した良い事例であろう。

 また、ジェネリック医薬品の研究開発及び製造販売で知られる共和薬品工業株式会社は、事業拡大に向けて魅力的な市場や提携先を模索していた中で、成長が期待されるインドが

 将来的に世界の医薬品の製造拠点になること予見、同国の同業者であるルピン社と2005年より共同研究を進めている。その後、共同研究開発を進める中で、価値観及び経営方針が類似していたことなどから、経営レベルでも信頼関係を構築し、07年に投資提携を開始、その結果、経営管理手法の高度化やルピンの生産設備を活用した安定供給体制の確保とコストの削減、ルピンのグローバルなネットワークを活用した原材料の調達及びライセンスの推進などを背景に、後発医薬品の認知や政府の利用促進政策とも相まって、売り上げを3倍に伸ばしている。その後、同社は08年にルピンの完全子会社となっている。

 成功例を上げればきりがないが、もちろん、残念ながら失敗し、撤退している企業も少なくないだろう。しかし、異国の異文化の中で市場を獲得するには有効な手段であることは間違いない。世界的にも経済状況が目まぐるしく変化する昨今、閉塞感の漂う市場を打開するための選択肢として、大企業のみならず中小企業にとっても、海外展開はますます重要な戦略となってくるだろう。(編集担当:藤原伊織)

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