メイ首相とトランプ大統領、握手を交わして米英の友好を強調

2017年1月29日 21:55

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アメリカと英国の「握手」は、今後にどのような影響をもたらしていくだろうか。

アメリカと英国の「握手」は、今後にどのような影響をもたらしていくだろうか。[写真拡大]

 訪米中の英国のメイ首相が、27日、ホワイトハウスでトランプ米大統領と会談した。両者は「両国の特別な関係」についてアピール、さらに報道陣の前で「手を繋いで歩く」姿を見せ、米英の蜜月を強調した。

 トランプ大統領の就任から一週間と少しが過ぎた。このわずかな期間で、大統領は精力的に大統領令を発して次々に選挙公約を実現、国際的な物議を醸している。中でも重大なのが対イスラム教徒への強硬的政策であり、オバマ政権時代にはアメリカとの歩み寄りを見せていたイランが対米制裁措置を発動するなど、波紋は大きい。だが、それは本題ではないので、ここではこれ以上は触れない。

 英国が、昨年6月に行われた国民投票の結果として、欧州連合(EU)からの離脱を決めたことはご記憶かと思う。

 キャメロン前首相は、この結果を受けて辞任。その後継者となったのが、キャメロン内閣で内相を務めるとともに、EU離脱派の指導者でもあったテレーザ・メイ氏である。ちなみに、かつてマーガレット・サッチャー元首相は「鉄の女」と呼ばれたが、メイ首相のあだ名は「氷の女王」だそうだ。

 英国のEU離脱はまだ実行されてはいないが、メイ首相はもちろんその後離脱に向けた準備を精力的に進めており、実現は時間の問題と見られている。

 よく知られるように、トランプ大統領は「アメリカ第一主義」を掲げ、またそのような政策を推進している。両者の思想は、似ている。同じ、孤立主義者同士だからだ。孤立主義者同士だから仲良くできるというのは、皮肉に見えるかもしれないが、世の倣いでもある。実際、トランプ大統領は、メイ首相の掲げるEU離脱を、強く支持している。

 トランプ大統領は英国への親しみを示すため、様々なアプローチを行っている。交流の深かったサッチャー・レーガン時代について言及してみたり、「私の母はスコットランド生まれ」と発言してみたり、オバマ前大統領が撤去したホワイトハウス大統領執務室のチャーチル像を元に戻してみたり、といった具合だ。ちなみに、トランプ大統領はウィンストン・チャーチル元英首相のファンなのだそうで、メイ首相もこれに応え、古いチャーチルの演説録音を就任前のトランプ氏に贈ったことがある。

 さらに言えば、歴史を紐解くと、ヨーロッパ国家の共同体、という構想を最初に国際政治の場で打ちだしたのは、チャーチルなのだという。ただし、これには但し書きがつく。「欧州には共同体が必要だ。ただし、英国がそれに加わる必要はない」というのが、チャーチルの残した言葉だそうである。メイ首相は大統領とともにチャーチル像前で記念撮影を行ったが、当然、メイ首相の頭にも、チャーチルのこの言葉への意識があるであろう。

 英米の「特別な関係」は、チャーチルの時代、二度の世界大戦(チャーチルはWW1、WW2のいずれにおいても英国の指導者を務めている)での両国の協力関係を経て、世界の安全保障の中核を成すまでに深められた。チャーチルとルーズベルト元大統領は、プライベートな休暇を共に過ごすほどに親しかったという。

 もっともトランプ大統領はアメリカが「世界の安全保障の中心」にいるという現状を打破しようとしているわけであるが、喫緊の問題として、北大西洋条約機構(NATO)をどうするか、という点になると、これは支持するそうである。大統領とメイ首相は、首脳会談において、「NATOは重要である」という点について、100%の合意を示したのだ。

 かつて、ルーズヴェルトはチャーチル本人に向かってこう言ったという。「ウィンストン、私はね、君という存在と同じ時代に生きられたことを光栄に思うよ。たとえ、私が君の引き立て役に過ぎないのだとしてもね」。

 トランプ大統領が「英国の首相の引き立て役」になるということはまずあるまいが、既に始まっている「トランプ大統領の時代」において、メイ首相の方はいかなる役回りを果たしていくことになるのであろうか。(記事:藤沢文太・記事一覧を見る

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