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iPS細胞由来の網膜組織を用いて視機能を回復、理研が確認
網膜は、眼球の内側にある厚さ0.2mmほどの透明な膜状の組織だ。光刺激が眼球の角膜、水晶体、硝子体を通り網膜に達すると、「視細胞」で電気信号に変換される。電気信号は網膜内の数種類の神経細胞間の伝達を経た後、網膜神経節細胞から視覚情報として脳に伝えられる。このように情報が脳に達して初めて、ヒトは物が見えるのだという。
網膜は再生力が低いため、障害を受けると自然な治癒は見込めない。「網膜変性」は加齢や遺伝的要因により、視細胞が変性し消失していく疾患である。視細胞がほぼ消失している末期の網膜変性には、現在のところ人工物を用いる人工網膜以外には確立した治療法はない。そのため世界中で、成体幹細胞、ES細胞、iPS細胞由来の網膜組織を変性網膜に移植する試みが盛んに行われている。しかし、移植された網膜組織が成熟して光応答し、さらにシナプスが形成されたことを確認した報告はまだない。
理化学研究所(理研)の研究チームは2014年に、マウスのES細胞やiPS細胞から自己組織化により分化させた立体網膜組織を網膜変性末期マウスの網膜に移植し、移植片中の視細胞が「外節構造」を持つ最終形態まで熟成することを示した。
今回、研究チームは、マウスiPS細胞由来の網膜組織を網膜変性末期マウスに移植したところ、移植先の双極細胞の軸索末端と移植片内の視細胞のシナプス末端が接触したことを確認した。また、シャトルアボイダンス・テストによる光シグナルと電気ショックを関連づけた視機能の評価法を開発し、移植後マウスの光応答に関する行動パターンの変化を検証した。
さらに移植後網膜の光応答を、多電極アレイシステムを用いて電気生理学的に記録したところ、脳につながる網膜神経節細胞から光応答がシナプスを介して得られることがわかった。以上の結果は、①自己組織化により分化させたiPS細胞由来の立体網膜組織が末期の網膜変性に対する移植素材として有効であること、②開発した視機能の評価法が従来の視機能検査法では難しかった部分的な視野回復の変化を知るのに有効な手段であることを示しているとしている。
この研究は、研究チームが目標としている網膜色素変性患者に対するiPS細胞由来の網膜組織の移植治療における“裏付け実験”として大きな意義があるとしている。(編集担当:慶尾六郎)
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※この記事はエコノミックニュースから提供を受けて配信しています。
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