環境タウン「浦和美園 E-フォレスト」が売れている意外な理由とは?

2016年12月3日 18:55

印刷

記事提供元:エコノミックニュース

ここ数年、住宅業界では「スマートホーム」という言葉を聞く機会が増えてきた。欧米では以前より、ホーム・セキュリティを中心としてスマートホーム的なサービスが提供されていたが、日本ではそういう概念自体がなかった。しかし、度重なる自然災害などを背景に、日本人の中にもエネルギーに対する節約意識が飛躍的に高まったこと、また通信事業者を中心にIoT(モノのインターネット、Internet of Things)市場が拡大するに伴い、スマートホームやスマートシティに対する関心も増大傾向にあるようだ。IT専門調査会社 IDC Japan 株式会社によると、国内IoT市場は2020年まで年間平均成長率16.9%で成長し、13.8兆円にまで達すると予測している。

IoTを利用した住宅に対する一般的な認識としては「家の中のあらゆるモノがネットワークにつながり、便利に使える」「省エネや節電が自動的に実行できる」といったところだろう。

 しかし、実際のところ、住宅関連企業が軒並み注力しているにもかかわらず、これまでのところ、爆発的なブームといえるような状況には至っていない。その背景には「興味はあるけれど、必要性を感じない」「便利になる分、面倒な操作も増えそう」などといった、新しい技術に対するネガティブな意識もあるようだ。スマートホームやスマートシティというだけでは、なかなか購買には結びつきにくいのかもしれない。

 ところが、そんな中でも、さいたま市の「スマートエネルギー特区」事業の一環として進められている、環境タウン「浦和美園 E-フォレスト」の販売はすこぶる好調のようだ。

 「浦和美園 E-フォレスト」は、埼玉県や県内の住まいに関わる様々な団体、企業などでつくる「埼玉県住まいづくり協議会」が推進する、低炭素で災害に強くコミュニティを育む先進的な環境タウン。平成28年度内に完成を予定している33戸の住宅は、高砂建設(6区画)、中央住宅(21区画)、アキュラホーム(6区画)が施工を担当し、電線類の地中化などにも取り組み、町全体の景観をよくしている。

 住宅の水準は「HEAT20G2」(高気密高断熱化とHEMS・創エネ設備)による さいたま市版のスマートホーム。平時に低炭素で、災害時にも一定の生活を確保できる住宅というだけでなく、場所と時間の有効活用による地域コミュニティの醸成や新たな生活支援サービスの展開も目標としている。しかし、どうやら「浦和美園 E-フォレスト」の販売が好調な理由は、最新のスマート技術やエネルギー水準だけではなさそうだ。

 「浦和美園 E-フォレスト」で興味深いのは、同じコンセプトで進められている最先端の街づくりプロジェクトでありながら、住宅業者3社がそれぞれの特長と魅力を活かした個性的な住宅提案を行っている点だ。担当区画が最も多い中央住宅は、コモンスペース「つなぐ庭」を中心に、素材系の「木肌のリビング」「森のダイニング」、空間系の「スタジオキッチン」「アトリエリビング」の計4パターンのプランで構成。高砂建設は、地元埼玉の優良木材「西川材」と「外断熱二重通気工法」を組み合わせることで家全体を温度差のない環境に保ち、空気質にもこだわった健康住宅となっている。

 また、アキュラホームは「家事ラク」をテーマに、玄関、シューズクローク、ダイニングキッチン、洗面室を巡る回遊動線がママ層から圧倒的な支持を集めているほか、大開口によってリビングと一体化する開放感あふれるアウトドアリビングも好評を得ているようだ。

 「浦和美園 E-フォレスト」の成功をみると、スマートホームは特別な仕様ではなく、むしろ、ユーザーの選択肢の中ではすでに「当たり前」になりつつあるのかもしれない。スマートホームやスマートタウンは基本的なもので、購買意欲を掻き立てるのはやはり、それも含めた住宅全体、街全体の「住み心地」や「居心地」の良さにあるようだ。(編集担当:石井絢子)

■関連記事
各地で増える自然災害。震災や台風、もしもの時に備える技術と活動
全国で加速するスマートハウス・スマートシティの今
日本初のスマートタウンは、まちの未来を変えるか?
世界規模で拡大するスマートシティ市場。日本的スマートシティの理想型とは
日本初マイクログリッドによるスマートタウンが震災復興の取組みから誕生

※この記事はエコノミックニュースから提供を受けて配信しています。

関連記事