デスノート・夜神月は日本の法律で裁ける?弁護士にマジメに聞いてみた

2016年11月6日 13:49

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記事提供元:キャラペディア

弁護士先生に聞いてみたシリーズ

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 9週連続1位だった『君の名は。』を破り、初登場1位を獲得し話題となっている映画『デスノート Light up the NEW world』。2003年12月から漫画連載が開始され、2006年にはアニメ化。その秀逸な設定と世界観、先の読めない展開で、多くのファンを魅了しました。ノートに名前を書くだけで書かれた相手を殺す事ができる、そんな不可思議なノートを主人公「夜神月」が手にした事から物語『DEATH NOTE』は始まります。

 しかし、このデスノートによる殺人が本当にこの現代社会で起こったとしたら、今の日本の法律では夜神月にどんな裁きを下せるのでしょうか?改めて法律の面から専門家の意見を交えて考えてみようと思います。今回、デスノートによる殺人について教えて頂いたのは、アディーレ法律事務所の岩沙好幸先生です。

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 --記者

 デスノートでの殺人を、現在の日本の法律で裁く事は可能なのでしょうか?また、犯人の自白「私はノートに名前を書いて人を殺した」は法的に殺人の証拠となりうるものなのでしょうか?

 --岩沙先生

 デスノートでの殺人を殺人罪に問うためには、ノートに名前を書く行為の危険性や死亡との因果関係の証明がポイントです。

 一般的にノートに人の名前を書く行為は人を死亡させる危険のある行為ではありません。また、ノートに名前を書いたせいで人が死んだと裁判官も認めないでしょう。もっとも、ノートを検証し、名前を書くと人が死ぬことが明らかになれば、もちろん殺人罪に問うことができます。

 なお、犯人の自白は殺人の証拠になります。もっとも、刑事訴訟法319条では「被告人は、公判廷における自白であると否とを問わず、その自白が自己に不利益な唯一の証拠である場合には、有罪とされない。」と規定し、自白しか証拠がない場合は有罪にできません。

 --記者

 例えば私が普通のノートに誰かの名前を書いたとして、その人が数日後に死んでしまった場合、罪に問われる可能性はあるのでしょうか?

 --岩沙先生

 罪に問われることはないでしょう。ノートに名前を書く行為は危険な行為ではありませんし、死んだのも数日後なので、ノートの記入とは全く無関係な事情で死亡したことになります。

 --記者

 デスノートにかぎらず、呪殺や洗脳など、直接的に手を下さずに人を殺める事ができた場合、現在の法律で罪に問う法律はあるのでしょうか?

 --岩沙先生

 呪殺は、先ほど説明した危険性や因果関係の証明が難しいので殺人罪に問うことは難しいでしょう。一方、洗脳の場合は殺人罪が成立する可能性があります。過去の裁判例では、暴力または精神的圧迫により被害者を抑圧し自殺させた事例で殺人罪の間接正犯を成立させたものがあります(最決平16・1・20)。直接的に手を下さず他人(被害者本人を含む)を利用して犯罪を実行した場合も処罰されます。

 --記者

 実際にデスノートによる犯罪が起こった場合、結局のところ今の日本の法律で犯人を裁く(捕まえる)には、どうしたら良いのでしょうか?

 --岩沙先生

 やはり危険性や因果関係の証明が全てですね。デスノートの危険性と死との因果関係を裁判官に証明できない限り、デスノートによる犯罪を裁くことは非常に難しいです。これらさえ証明できれば、特に新しい法律を作る必要はありません。

 というワケで、デスノートによる殺人について、弁護士の岩沙好幸先生に色々とお話を伺いました。主人公「夜神月」を、現在の日本の法律で裁く事はやはり非常に難しそうです。ノートに名前を書くことと殺人の因果関係の証明、そんな事が出来るのはきっと猫背の天才くらいでしょうから。

■取材協力


 岩沙好幸(いわさよしゆき)弁護士(東京弁護士会所属)
 弁護士法人アディーレ法律事務所

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