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学習初期に失敗するほど、最適解を見つけるのがうまくなる―東大・池谷裕二氏ら
迷路課題と行動試験の結果 (a)迷路の俯瞰図。マウスは毎回スタート地点に置かれ、ゴール地点のフードペレットまで走る。(b)同じ場所を2度以上通らずにスタートからゴールまで行く道のりは7通りある。経路1から経路7の順で距離は短い。(c)ある1匹のマウスの走行軌跡。1日20試行を行い、最短経路(経路1)を見つけて学習基準をクリアするまで11日間かかった。(d)各マウスが最短経路を見つけて学習基準をクリアするまでにかかった日数。3日から18日までばらついている。(e)学習初期の探索行動(経路1-7を外れて迷路中を歩きまわった試行; (c)の黒色の軌跡)の頻度と最短経路を見つけるまでに要した日数との間に有意な負の相関があった(探索行動が多いほど、少ない日数で最短経路を見つけられた)。(東京大学の発表資料より)[写真拡大]
東京大学の池谷裕二教授らの研究グループは、多数の選択肢がある迷路をマウスに解かせて、学習の初期により多くの失敗をしたマウスの方が、素早く最短経路を見つけることを見出すことを明らかにした。
動物の学習能力は、刻々と状況が変化する自然の中で生き抜くために必須であるが、自然という不確定要素がとても多い複雑な環境でどのように学習しているのかは、明らかになってなっていなかった。
今回の研究では、スタートからゴールまで合計7つの経路がある迷路をマウスに解かせ、マウスがどの経路を選ぶか調べた。その結果、学習初期における探索行動(ゴールまで効率よく辿りつけず、途中の餌のないアームに2回以上入ってしまった試行)の頻度が高いほど、より早く最短経路を見つけることができる傾向があることを発見した。
また、その後、一部の経路を塞いだところ、迷路課題の学習の初期によく迷路を探索し、さらにより万遍なく迷路全体を探索したマウスのほうが、経路を塞がれた際により効率的な経路を選択できていることがわかった。つまり、学習の初期によく失敗し、さらに同じ失敗の繰り返しではなく、いろんな失敗をした方が後の成果が良くなっている。
今後は、場所の学習に関係する細胞の研究と合わせて、柔軟な問題解決の脳内メカニズムの解明に向けたさらなる研究を行うことが期待されている。
なお、この内容は「Scientific Reports」に掲載された。論文タイトルは、「Early Failures Benefit Subsequent Task Performance」(和訳:初期の失敗が後のタスク成績を向上させる)
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