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115億光年彼方にあるモンスター銀河の集団を発見―東大・梅畑豪紀氏ら
原始グレートウォールとモンスター銀河の想像図。約5億光年にわたって若い銀河がフィラメント状に分布した大集団である原始グレートウォールの中心部で、モンスター銀河がいくつも誕生していると考えられる。(研究グループの発表資料より)[写真拡大]
東京大学の梅畑豪紀日本学術振興会特別研究員らによる国際研究チームは、115億光年かなたに位置する若い銀河の大集団「原始グレートウォール」の中心に、爆発的な星形成活動を行っている銀河が9個も群れ集まっている様子を捉えることに成功した。
初期宇宙には、我々の住む銀河系と比較して数百倍から数千倍もの勢いで星を作っている「モンスター銀河」があり、銀河形成の歴史を紐解く上で重要な天体であると同時に、ダークマター(暗黒物質)の分布を知る貴重な手がかりになると考えられている。
今回の研究では、みずがめ座の一角にある「SSA22」と呼ばれる天域に注目した。この方向には、115億光年彼方に若い銀河の大集団が発見されており、この大集団はフィラメント状の立体構造を成していることが知られていて、「原始グレートウォール」だと考えられている。そこで研究チームは、アルマ望遠鏡を用いて、この原始グレートウォールについてモンスター銀河の徹底的な捜索を行った。その結果、合計9個のモンスター銀河が原始グレートウォールの内部に群れ集まって存在していることを確認した。
モンスター銀河は希少な天体で、1億光年四方の立方体の中に平均して0.1個程度しか存在しないことが知られている。これに対して、今回発見されたモンスター銀河の集団はその数千倍のとても高い密度を示していた。また、このモンスター銀河の集団は、原始グレートウォールの中でも中心部、フィラメントの交わる場所に位置していた。
若い銀河の密度が高くなっている場所は、ダークマターの密度も高くなっている。そのような特殊な環境で、多くのモンスター銀河が生まれていることを示した今回の研究結果は、現在の銀河形成理論による予想を裏付けるものという。また、原始グレートウォールがモンスター銀河や、その子孫となる巨大銀河の誕生の母体となっていることを示しているという。
今後は、アルマ望遠鏡やすばる望遠鏡を用いて、モンスター銀河と原始グレートウォールの関係をより詳しく調べていく予定となっている。
なお、この内容は「The Astrophysical Journal Letters」に掲載された。論文タイトルは、「ALMA Deep Field in SSA22: A concentration of dusty starbursts in a z=3.09 protocluster core」。
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