体温変化を常時監視する「貼り付け型電子体温計」オムロンが開発

2015年10月10日 22:29

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記事提供元:エコノミックニュース

オムロンがCEATECの会場で公開した8.1mm×7.7mmセンサーチップを筐体中央に内蔵した「貼り付け型電子体温計」。小型通信システムと駆動用バッテリーを内蔵する

オムロンがCEATECの会場で公開した8.1mm×7.7mmセンサーチップを筐体中央に内蔵した「貼り付け型電子体温計」。小型通信システムと駆動用バッテリーを内蔵する[写真拡大]

 オムロン・ヘルスケアは、独自のセンサー技術とアルゴリズムにより身体の表面温度から体温を測定する、超小型貼り付け体温測定技術を開発した。10月7日から千葉・幕張メッセで開催された「CEATEC JAPAN 2015」オムロンブースにおいて初公開した。

 2000年以降、夏になると全国的に猛暑日が続き、熱中症患者が毎日のように救急搬送されるというニュースが急増する。その熱中症の症状には、体温の急上昇や体温調節機能の低下などがあり、重篤化すると死に至るなど、なかなかやっかいな真夏の病気といえる。とくに乳幼児や高齢者の症状は急な発熱などで、本人に自覚症状が無い場合や、自覚症状があっても周囲の人に伝えることができないまま体温が変化し、周りの人が気づいたときには、すでに重症化しているケースも多い。

 しかし、一般の体温計は、わきや口中で体温計をしっかりとはさむ必要があるため、体温を測り続け体温の変化を確認することは、なかなか難しいのが実情だ。

 ヒトの体温とは、体の深部の温度であり、脂肪や血液などの体組織を通って、体表に伝わる。体の表面温度は、深部から体表までの距離や脂肪の厚さ、熱の伝わりやすさ(熱流)など、ヒトの体組織特性によって、体の深部の温度、つまり体温より低くなる。しかし、体表に伝わる熱の伝わりやすさ(熱流)と体組織の特性がわかれば、体の表面温度から深部の温度を推定することができる。

 オムロンでは、独自のセンサー構造により体の表面から体温を測定する独自のアルゴリズムを開発。深部温度センサー内には熱抵抗の異なる2種類の熱流センサーを並べ、大小2つの熱流を測定し、表面温度と熱流の関係から体温を測定。

 さらに、深部温度センサーは、MEMS技術(微細加工技術)によりチップサイズ8.1mm×7.7mmの超小型化を実現。この深部温度センサーをお腹などの目立たず、邪魔にならない場所に貼り付け、体温を継続的に測定し、体温変化を管理することが可能となる。

 センサーに通信機能を搭載することで、スマートフォンに測定データを送り、体温変化があった場合に、家族やかかりつけ医等にアラームを鳴らすなど、危険な体温変化をすぐに察知し対応することができる。これにより、乳幼児や高齢者の体温変化管理だけでなく、屋外作業者の体調管理など、体温の管理によるさまざまな「安心」が得られるという。

 CEATECで公開されたセンサーは、プロトタイプの通信装置とバッテリーを内蔵し、写真の大きさに仕上がっていた。バッテリーは市販のボタン電池でも十分で、製品化に際してはオリジナルのリチウムイオン電池などを採用するかもしれないという。

 また、通信方法は、家庭内の使用であればBluetoothで十分だが、大規模医療機関であればWi-Fiが妥当だという。この体温計が実用化されれば、大規模医療施設の入院患者への検温という習慣が消えるかもしれない。

 オムロンでは今後、2017年度の商品化を目指し、開発を進めるという。(編集担当:吉田恒)

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