長征四号丙ロケット、地球観測衛星「遥感衛星二十七号」の打ち上げに成功

2015年8月30日 17:00

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記事提供元:sorae.jp

長征四号丙ロケット、地球観測衛星「遥感衛星二十七号」の打ち上げに成功(Image Credit: 中央政府门户网站)

長征四号丙ロケット、地球観測衛星「遥感衛星二十七号」の打ち上げに成功(Image Credit: 中央政府门户网站)[写真拡大]

 中国国家航天局は8月27日、地球観測衛星「遥感衛星二十七号」を搭載した「長征四号丙」ロケットの打ち上げに成功した。遥感衛星二十七号は比較的高い軌道から地表を観測する衛星と見られており、同型機の打ち上げはこれで4機目となった。

 ロケットは中国標準時2015年8月27日10時31分(日本時間2015年8月27日11時31分)、山西省にある太原衛星発射センターの9号発射施設から離昇した。

 その後、中国政府や国営メディアなどは、打ち上げが成功したと発表した。

 また、米軍が運用する宇宙監視ネットワークは、近地点高度約1100km、遠地点高度1200km、軌道傾斜角100.5度の軌道に、2つの物体(国際衛星識別符号2015-040A、2015-040B)が乗っていること確認している。このうち2015-040Aが衛星で、2015-040Bがロケットの第3段であると見られる。

 中国政府の発表によれば、遥感衛星二十七号は地球観測(リモート・センシング)衛星で、科学的な試験や資源探査、農作物の管理を目的としているとされる。だが、軍事目的でも使用されていることは半ば公然の秘密となっている。

 遥感と名のつく衛星には、電子光学センサーを搭載するものと、合成開口レーダー(SAR)を搭載するもの、そして3機同時に打ち上げられ、編隊で飛行して艦艇から出る電波を傍受するものの、大きく3種類があるとされている。今回軌道に乗った物体は2つで、これは遥感衛星二十七号とロケットの第3段と考えられることから、まず電波傍受衛星は除外される。

 そして、過去に太原衛星発射センターから長征四号丙を使って打ち上げられ、かつ高度1200km、傾斜角100度あたりの軌道に乗った遥感衛星は、八号、十五号、十九号、二十二号しかない。したがって、遥感衛星二十七号はこれらのシリーズに属する衛星であると考えられる。

 このシリーズは電子光学センサー(ディジタル・カメラ)を搭載し、軌道上から地表を撮影することを目的としている。1200kmという高度は地球観測衛星にしては高い部類に入るが、おそらく低い分解能ながら広い範囲を観測することを目的にしているためと思われる。

 遥感衛星二十七号の降交点通過地方時は9時30分で、これは2009年に打ち上げられた遥感衛星八号と同じであり、おそらく老朽化した遥感衛星八号の代替機として打ち上げられたと考えられる。なお、その他の衛星はそれぞれ14時30分(十五号)、10時30分(十九号)、そして13時30分(二十二号)に通過する軌道に入っている。

 ちなみに、電子光学センサー搭載型の遥感衛星は他に、高度500km付近と、650km付近にも投入されており、こちらは狭い範囲ながら、高い分解能で観測することを目的としていると思われる。つまりこの3種類の軌道に衛星を配備することで、地表の細かい様子から広い範囲の様子まで、まんべんなく観測する意図があると考えられる。

 高度500kmの軌道にはこれまで、遥感衛星五号(2008年打ち上げ)、遥感衛星十二号(2011年)、遥感衛星二十一号(2014年)が打ち上げられている。

 なお、2012年に打ち上げられた遥感衛星十四号も似た軌道を飛んでいるが、公開されている想像図を見る限り、光学センサーを搭載していることはほぼ間違いないものの、遥感衛星五号らとは異なる外見をしており、より先進的な機器を積んだ試験機であると思われる。

 また2014年には、こちらもあくまで想像図ではあるものの、遥感衛星五号シリーズや遥感衛星十四号とも異なる形状をした、遥感衛星二十六号が打ち上げられている。

 高度650kmの軌道には遥感衛星二号(2007年)、遥感衛星四号(2008年)、遥感衛星七号(2009年)、遥感衛星十一号(2010年)、遥感衛星二十四号(2014年)が打ち上げられている。

 長征四号は上海航天技術研究院(SAST)によって開発、製造されているロケットで、長征二号をベースに、四酸化二窒素と非対称ジメチルヒドラジンを使用する第3段を追加した機体だ。今回使われたのはそのバリエーションのひとつである長征四号丙(CZ-4C)である。

 長征四号はもともと、長征二号を静止衛星打ち上げロケットに発展させる際に、SASTが提案した構成である。しかし、同時期に中国運載火箭技術研究院(CALT)が液体酸素と液体水素を使用する第3段を搭載した構成を提案し、最終的にCALT案が選ばれ、後にこれが長征三号となった。

 ただ、CALT案は液体酸素と液体水素を使う先進的な設計であったことから、そのバックアップとしてSAST案も開発が行われた。結局、長征三号が無事に実用化されたため、SAST案は極軌道打ち上げロケットへ転用され、現在の長征四号となった。

 長征四号の最初の機体、長征四号甲は1988年9月6日に初飛行し、1990年9月3日に2機目が打ち上げられ、引退した。その後1999年5月10日に、長征四号甲のフェアリングを大型化し、またエンジンなどに改良を施して打ち上げ能力を高めた長征四号乙が登場。さらに2006年4月26日には、第3段に再点火可能なYF-40エンジンを搭載した長征四号丙が投入された。現在長征四号乙と丙が、主に軍事衛星や地球観測衛星の打ち上げに使用されている。

 長征四号はこれまでに44機が打ち上げられており、2013年に長征四号乙が打ち上げに失敗した以外は、安定した打ち上げを続けている。

■我国成功发射遥感二十七号卫星 _图片_新闻_中国政府网
http://www.gov.cn/xinwen/2015-08/27/content_2920633.htm

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