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【小倉正男の経済羅針盤】中国バブル崩壊とアメリカ利上げの行方
■中国のバブル崩壊とアメリカの利上げ
中国・上海株式市場の暴落は収まったのだろうか。底を打ったということで東京市場も回復に転じたが、さほどというかあまりに信頼は置けないのではないか。
当の中国は、上海株式市場の暴落をもたらしたのは、アメリカが9月に利上げを目論んでいるためだとしている。原因はアメリカにあり、中国はその被害者だというわけである。
利上げ=インフレ退治ということでドル高になれば、ドルペッグをしているため元の通貨価値も実質的に上昇する。それは困る、中国がやりたいのはデフレ退治だと、人民元の切り下げを実施したのだということになる。その元の切り下げが、上海の株式市場に飛び火した。
皮肉なことに上海株式市場が落ち着くと、アメリカの利上げが頭を持ち上げる。「世界はアメリカの利上げに対応できる」、と。
アメリカは利上げ=インフレ退治、中国は利下げ=デフレ退治と方向性が逆である。しかし、アメリカはアメリカで、中国の事情は斟酌しない。しかし、そうなると上海市場がまたまた混乱に陥る。ドルペッグ制のマイナス面が露呈している。
習近平は、自国経済がバブル崩壊状況にあることを認めるわけにはいかない模様だ。 だから、アメリカはよろしくそのあたりの「空気」を読んで、利上げをしばらく棚上げしてほしいというのが本音に違いない。
■利上げは延期=世界経済が底割れしては元も子もない
中国は、政策金利を引き下げるなど金融緩和を実施し、地方政府にインフラ投資を要請している。地方政府としては、すでにインフラ投資はやり過ぎており、借金漬けになっているのが現状だ。それにまたインフラ投資をして、収賄などを疑われるのも怖い。これではインフラ投資は掛け声のみということになる。
中国は、AIIB(アジアインフラ投資銀行)をテコにした「一帯一路構想」の推進を提唱してきている。だが、周辺国へのバブルの「輸出」を目前にして、バブルが崩壊した格好にほかならない。
リーマンショック時のアメリカと同様だが、バブルの当事国は動けない。となればアメリカはせめても利上げを見送り、リーマンショック時の「恩返し」をする番になる。
ドルペッグでは、アメリカが利上げをすれば、元はドルに連動して高くなりデフレを助長することになりかねない。アメリカは利上げを止めて、中国に猶予を与える必要がある。
中国は、リーマンショック直後に4兆元(57兆円)の国内インフラ投資を行って、世界経済の底割れを防いだ。中国は、アメリカが苦しみもがいている時にアメリカに塩を送った。 アメリカはそんな「故事」はすっかり忘れただろうが、中国バブル崩壊で世界経済が底割れしては元も子もない。
■日本は企業&市場改革を徹底して経済の「質」を上げろ
日本もアメリカの利上げが延期されれば、「ドル安円高」になるのだから、それはそれで無難とはいかない。日銀の3度目の異次元金融緩和の出番ということにならざるをえない。
日本は異次元金融緩和以外にそんなにやれることはないが、コーポレートガバナンス・コードなど企業&市場改革を徹底すべきではないか。
東芝ではないが、社長をやって、副会長、会長をやって、相談役をやって死ぬまで会社にしがみつくようなのがあまりにも多い。その都度、部屋よこせ、クルマよこせ、秘書よこせ、である。社員たちの企業年金をカットして、会社を救ったとして、会社に残るといった事例すらある。「押し込み」など古典的な手口で粉飾決算を行う構造がそこにある。
個人・大株主のオーナーが社長(CEO)を兼任して、チェック&バランスを説明しないような会社も少なくない。わざわざCEOを切って、個人・大株主自らがCEOになるようなケースもある。スチュワードシップ・コードではないが、機関投資家、そして個人投資家も、ガバナンスなど頭にない企業は敬遠すべきではないか。企業&市場改革が、経済の「質」を上げることになる。
さらには、オリンピック関連施設・道路などインフラ投資など前倒しできるものは前倒しするなど「特需」を少し演出することも必要かもしれない。
バブルを癒すには次のバブルをつくるのが手っ取り早いのだが、そう都合よくはいかない。中国のバブル崩壊は、どうにも低迷の序曲ということになるのではないか。
(小倉正男=経済ジャーナリスト。『M&A資本主義』『トヨタとイトーヨーカ堂』(東洋経済新報社刊)、『日本の時短革命』『倒れない経営』『第四次産業の衝撃』(PHP研究所)など著書多数。東洋経済新報社で編集局記者・編集者、金融証券部長、企業情報部長などを経て現職。)(情報提供:日本インタビュ新聞社=Media-IR)
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※この記事は日本インタビュ新聞社=Media-IRより提供を受けて配信しています。
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