千葉大、ニンニクの薬用効果の基になっている酵素遺伝子を発見

2015年8月11日 11:41

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千葉大学の吉本尚子助教、齊藤和季教授らは、ニンニクの薬理効果や健康機能作用を示す含硫黄化合物アリインの生産の鍵となる酵素遺伝子を発見した。(写真:千葉大学らの発表資料より)

千葉大学の吉本尚子助教、齊藤和季教授らは、ニンニクの薬理効果や健康機能作用を示す含硫黄化合物アリインの生産の鍵となる酵素遺伝子を発見した。(写真:千葉大学らの発表資料より)[写真拡大]

 千葉大学の吉本尚子助教、齊藤和季教授らは、ニンニクの薬理効果や健康機能作用の本体である含硫黄化合物アリインの生産の鍵となる酵素遺伝子を発見した。

 ニンニクは食用として広く用いられるだけでなく、癌予防に最も有効な食品であると位置づけられている。その薬効や健康機能性は、ニンニクの含硫黄成分「アリイン」に起因しているが、アリインの生合成に関わる酵素や生合成経路の詳細は長い間明らかになっていなかった。

 今回の研究では、アブラナ科植物で含硫黄成分の硫黄原子の酸化反応を触媒することが報告されている酵素群の遺伝子配列情報と、ニンニクが属するネギ属植物の公開遺伝子配列情報との比較解析に基づき、ニンニクから硫黄原子酸化酵素の候補遺伝子としてAsFMO1を単離した。そして、AsFMO1遺伝子の機能を明らかにするために、出芽酵母にこの遺伝子を導入して発現させ、解析を行った。

 その結果、AsFMO1蛋白質はアリイン生合成の中間体と考えられるスルフィド化合物であるS-アリルシステインの硫黄原子を酸化してアリインを合成すること、AsFMO1 蛋白質によってS-アリルシステインから合成されたアリインは、立体異性体のうち1種類のみ生じることが分かった。

 さらに、ニンニク内におけるAsFMO1遺伝子の発現部位やアリインの貯蔵部位を解析した結果、AsFMO1はニンニクの様々な組織で発現してアリイン生合成に関わる重要な酵素遺伝子であることが判明した。

 今後は、AsFMO1遺伝子の機能を応用することにより、植物や微生物を用いた有用含硫黄化合物の生物生産系の開発や、新規の薬効を示す含硫黄化合物の創薬、さらに薬用性が高いニンニクやその他のネギ属植物の効率的な育種が可能になると期待されている。

 なお、この内容は「The Plant Journal」に掲載された。論文タイトルは、「Identification of a flavin-containing S-oxygenating monooxygenase involved in alliin biosynthesis in garlic」(ニンニクのアリイン生合成に関わるフラビン含有 S-酸化酵素の同定)。

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