アトラスVロケット、航法衛星「GPS IIF-10」の打ち上げに成功

2015年7月18日 13:47

印刷

記事提供元:sorae.jp

アトラスVロケット、航法衛星「GPS IIF-10」の打ち上げに成功(Image Credit: ULA)

アトラスVロケット、航法衛星「GPS IIF-10」の打ち上げに成功(Image Credit: ULA)[写真拡大]

 ユナイテッド・ローンチ・アライアンス(ULA)社は7月15日(米国時間)、航法衛星「GPS IIF-10」を搭載したアトラスVロケットの打ち上げに成功した。GPS IIFシリーズの衛星は今回で10機目の打ち上げとなった。

 ロケットは米東部夏時間2015年7月15日11時36分(日本時間2015年7月16日0時36分)、フロリダ州にあるケープ・カナヴェラル空軍ステーションの第41発射台から離昇した。ロケットは順調に飛行し、打ち上げから約3時間23分後に衛星を所定の軌道に投入した。

 GPS IIF-10はカーナビやスマートフォンなどでおなじみのGPS(グローバル・ポジショニング・システム)を構成する衛星で、GPS IIFはGPSの衛星としては第4世代に当たる。前世代機と比べ、搭載されている原子時計の正確さが上がり、それによって測位もより正確にできるようなっている。今回打ち上げられたのはその9号機で、今後も順次、旧世代機からの入れ替えが進められていく予定となっている。

 GPS IIFはボーイング社が製造し、運用は米空軍が担当する。打ち上げ時の質量は1630kgで、高度2万0200km、傾斜角が55.0度の円軌道を周回する。設計寿命は15年が予定されている。

 打ち上げに使われたアトラスVは、ロッキード・マーティン社によって開発されたロケットで、ボーイング社のデルタIVロケットと共にULA社によって運用されている。ULA社はロッキード・マーティン社とボーイング社の共同出資で設立された、ロケット運用会社である。

 アトラスVは今回を含め、これまでに55機目が打ち上げられており、2007年に一度、衛星を予定より低い軌道に投入してしまった以外は安定した成功を続けている。また今回で45機連続での成功ともなった。

 今回の打ち上げに使われたのはアトラスV 401と呼ばれる構成で、これはフェアリングの直径が4m、固体ロケット・ブースターを装備せず、セントール上段にRL10エンジンが1基、ということを示している。

 アトラスVの第1段には、ロシアのNPOエネルゴマーシュ社が製造したRD-180エンジンが使われており、このエンジンを巡っては米国の国内、またロシア側からも、その使用や輸出に関して揉めている状況が続いている。ロシアのロゴージン副首相は、軍事衛星の打ち上げにロシア製エンジンの使用を禁止することも匂わせており、今後、軍事衛星の打ち上げにアトラスVが使えなくなる可能性もある。ロゴージン副首相の発言後もRD-180は定期的に輸出されており、差し迫った状況にはないものの、現在米国では国産の代替エンジンを開発する動きが始まっている。

 今回のアトラスVの第2段には、RL10C-1と呼ばれるエンジンが使用された。RL10は米国で50年以上使われて続けているロケット・エンジンのシリーズで、これまで数多くの人工衛星や惑星探査機などを打ち上げ続けてきた傑作エンジンである。推進剤には液体水素と液体酸素を使用する。エンジンを複数回点火できる能力を持ち、複数の衛星をさまざまな軌道に、かつ正確に送り込むことが可能となっている。

 以前まで、RL10にはアトラスV向けのRL10Aと、そのRL10AをデルタIV向けに改良したRL10Bの2種類があった。RL10C-1は、RL10Bエンジンを、アトラスVで使用できるようにさらに改造したもので、これにはデルタIVロケット向けに生産されたRL10Bの在庫が余ってしまっているという背景がある。

 例えば炭素繊維強化炭素複合材料を使ったノズルや、燃焼室やインジェクターなどはRL10Bのものが使われている。一方、ターボ・ポンプはRL10Aのものが用いられており、またRL10AにあってRL10Bにはない、点火システムの冗長化や、推進剤の混合比率を制御するための電子機器の搭載といった改造も施されている。RL10Cはいわば、RL1AとRL10Bを混ぜ合わせたようなエンジンだ。さらに、軌道上で運用できる時間も、従来の720秒から2000秒まで、3倍弱ほどにまで向上している。

 なお、アトラスVには、第2段にエンジンを2基並べて搭載する(xx2)構成があるが、RL10C-1はノズルの直径が大きいため、並べて搭載することができない。したがってxx2構成のアトラスVは、今後もRL10Aを使い続けることになる。

 また、RL10C-1をさらにデルタIVロケット向けに改造したRL10C-2も開発中で、数年のうちに運用に入るとされる。

■United Launch Alliance Successfully Launches Global Positioning Satellite for the U.S. Air Force - United Launch Alliance
http://www.ulalaunch.com/ula-successfully-launches-gpsiif10.aspx?title=United+Launch+Alliance+Successfully+Launches+Global+Positioning+Satellite+for+the+U.S.+Air+Force

【関連記事】
米空軍の無人宇宙往還機「X-37B」、打ち上げ成功 4回目のミッションへ
米空軍の無人宇宙往還機「X-37B」、まもなく4回目の飛行へ ソーラー・セイルも同乗
ULA社、アトラス・デルタ両ロケットの後継機の名前を選ぶキャンペーンを開催中
シエラ・ネヴァダ社、有翼宇宙往還機「ドリーム・チェイサー」の補給船版を発表
ロッキード・マーティン社、補給船「エクソライナー」と宇宙タグボート「ジュピター」を発表

関連記事