名車概論/現在でも“ゴーイチマル”と型式名で愛される日産のスポーツセダン──3代目ブルーバード

2015年5月10日 12:37

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記事提供元:エコノミックニュース

日産自動車で完全にレストアされた1969年型P510型ブルーバード1600デラックス。何度もステアリングを握った「510系」だが、ポルシェシンクロ独特のシフトフィールが忘れられない

日産自動車で完全にレストアされた1969年型P510型ブルーバード1600デラックス。何度もステアリングを握った「510系」だが、ポルシェシンクロ独特のシフトフィールが忘れられない[写真拡大]

 初代日産ブルーバードが誕生したのは1959年7月のことだ。ダットサン・セダンの後継としてデビューしたP310系は、ファミリーセダンとしての基本性能の高さと、走行性能も実力も十分でヒット作となった。ここから、ライバルのトヨタ・コロナとの「B vs C戦争」が始まるのだ。

 続く、1963年9月にデビューする410系は、イタルデザインに依頼したともされるデザインに賛否があり、コロナにトップセラーカーの座を奪われる。そのため、日産は次期ブルーバードの開発に並々ならぬ力を注ぎ、トップセラーの奪還を目指した。

 3代目の「ブルーバードP510」系がアンベールしたのは1967年8月9日、敢えて仏滅に日に衝撃的な発表を行なったという。発表会で日産は「ビス1本まで新しく開発した」と豪語したメカニズムだけでなく、先代で不振だったスタイリングにおいても最新のモードに刷新した。なかでも、エクステリアはウェッジシェイプのダイナミックなデザインとされ、超音速旅客機SSTをイメージしたという直線的な「スーパーソニックライン」と呼称するデザインとなり、国産車で初めてフロントドアから三角窓を取りさった。

 新開発のエンジンはそれまでのOHV(オーバーヘッドバルブ)形式から高回転までスムーズに回る最新のOHC(オーバーヘッドカムシャフト)式のL型エンジンに大きく進化した。デビュー時はベーシックなモデルには1.3リッターにシングルキャブを組み合わせたL13型エンジンを搭載。フラッグシップセダンのSSS(スーパースポーツセダン)には、大きな排気量1.6リッター(1595cc)4気筒OHCにSUツインキャブレターを組み合わせたL16型エンジンが搭載された。このL16型エンジンはデビュー時に最高出力100ps/6000rpm、最大トルク13.5kg.m/4000rpmを発生していた。この高性能エンジンを搭載したP510系のSSSの車両重量は915kg。現在の軽自動車並みに軽量だった。

 サスペンションは当初の設計では410系を踏襲した前ストラット式、後リジッドアクスル式とする予定だった。が、開発途中でBMWが先鞭を付け、以降の高性能小型ファミリーカーで主流となる4輪独立懸架式に変更された。

 フロントはストラット/コイルの独立、リアはセミトレーリングアーム式独立となり、以後の日産のFR(後輪駆動)車の定番サスペンション“セミトレ”となった。このセミトレ式サスペンションは、優れた操縦安定性と上質な乗り心地を両立し、高速走行だけではなく当時の日本でまだまだ主流だった未舗装路(ダートやグラベル)でも意識したチューンで、堅牢さも兼ね備えているものだった。事実、石原裕次郎主演の映画「栄光の5500キロ」にもなったP510型SSSによる1970年の「サファリラリー」優勝で実証されている。

 組み合わせるトランスミッションは3速マニュアル(MT)がベーシックモデルに搭載。SSS系は4速MTフロアシフトが採用され、1968年からはベーシックモデルにも4速フロアシフトが採用され、SSS系搭載の1600ccエンジンをディチューンしたシングルキャブエンジン搭載した「ダイナミックシリーズ」が追加され、ブルーバード510系は“スポーツセダン”としての地位を確立した。

 日産自動車で丁寧にレストレーションを受けた写真のP510型は、1969年型「1600デラックス」で、前述した「ダイナミックシリーズ」である。全長×全幅×全高は4120×1560×1410mm、ホイールベース2420mm。車重930kgだった。SSS系から移植した1.6リッター4気筒L型エンジンはシングルキャブ仕様ながら高回転までスムーズに回り、最高出力92ps/6000rpm、最大トルクは13.2kg.m/3600rpmを発揮していた。トランスミッションはSSS系と同じ4速フロアシフトのマニュアルで、シフトゲートはやや曖昧だが“熱したナイフでバターを切る”と表現された感触の独特なシフトフィールを持ったポルシェシンクロが組み込まれていた。(編集担当:吉田恒)

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